記事作成日:2026年10月4日
判例調査レポート
不貞(浮気)の慰謝料、
裁判ではいくら認められている?
「慰謝料っていくらくらいもらえるの?」「請求された額は妥当なの?」——不貞行為をめぐるご相談で、最も多くいただく質問のひとつです。当事務所では、最近10年間の裁判例40件を判例データベースで調べ、実際に裁判所が認めた金額と、金額を左右する事情を整理しました。
2026年10月調査|定禅寺通り法律事務所
まず結論:中央値は150万円、多くが100〜200万円
調べた裁判例のうち、慰謝料の金額がはっきりわかる39件を集計すると、裁判所が認めた慰謝料はちょうど真ん中の値(中央値)で150万円、平均で約160万円でした。約8割の事案が100万円〜200万円の範囲に収まっています。
250万円を超える金額が認められたのは、裁判での不誠実な対応や発覚後の悪質なふるまいといった「金額を重くする事情」があった事案か、不倫相手ではなく配偶者本人に請求した事案に限られます。「不倫されたら数百万円」というイメージをお持ちの方も多いのですが、裁判所の実際の判断はもう少し控えめです。
どんな調査をしたのか
判例データベース「判例秘書」で、2016年10月から2026年10月までの10年間に言い渡された判決のうち、「不貞」と「慰謝料」を含む民事事件を検索しました(674件)。そのうち、慰謝料の支払いが実際に命じられた事案を新しい順に確認し、年代が偏らないよう2017年・2019年・2021年・2023年の判決も加えて、40件を集計しています。
判決では、慰謝料とは別に弁護士費用(慰謝料の1割程度)などが上乗せされることがあります。この記事の金額は、上乗せ分を除いた慰謝料そのものの金額です。実際に支払いを命じられる総額は、これより1割ほど多くなるのが一般的です。
※40件はいずれも地方裁判所の判決で、39件が東京地方裁判所のものです。全国の裁判例を網羅したものではなく、「相場観」をつかむための参考値としてご覧ください。
何が金額を左右するのか
慰謝料の金額は、ひとつの事情だけで決まるわけではありません。ただ、40件を並べてみると、いくつかの傾向が見えてきます。影響が大きいと思われる順にご紹介します。グラフの青い棒が「中央値」、その下の赤い線が「最も低い例から最も高い例までの幅」、黒の点線が全体の中央値(150万円)の位置です。
① 不貞の期間——長いほど高くなる
最もはっきりした傾向が出たのが、不貞関係が続いた期間です。数か月程度の短い関係では中央値110万円でしたが、1年以上続いた事案では中央値200万円と、はっきり差がつきました。
※1年未満で250万円が認められた1件は、元配偶者と不倫相手が連帯して支払うよう命じられた特殊な事案です。また、40件のうち26件は判決文から期間がはっきり読み取れなかったため、この図には含めていません。
② 別居に至ったかどうか——別居すると高くなる
不貞をきっかけに夫婦が別居した事案は中央値150万円、関係が壊れて長く別居している事案では200万円前後になることもありました。一方、同居を続けている事案(家庭内別居を含む)は中央値120万円にとどまっています。不貞が夫婦関係にどれだけ深刻な影響を与えたかが、金額に反映されていると考えられます。
③ 結婚していた期間——5年未満はやや低め、それ以上は大差なし
結婚して間もない時期(5年未満)に不貞があった事案は中央値120万円と、やや低めでした。ただし5年を超えると中央値は150〜180万円の範囲で、結婚期間が長いほど高くなるという単純な関係はありませんでした。20年以上の事案は70万円から450万円までと幅が大きく、お子さんの年齢や請求相手など、個別の事情で大きく変わっています。
④ 離婚したかどうか——「離婚すれば高くなる」とは限らない
意外に思われるかもしれませんが、今回の集計では、すでに離婚した事案(中央値140万円)よりも、離婚していない事案(中央値190万円)のほうが高い結果になりました。これは、離婚していない事案の多くが「別居して夫婦関係は壊れているが、まだ離婚は成立していない」という状態で、しかも長期間の不貞や不誠実な対応といった重い事情を伴っていたためと考えられます。裁判所は「離婚したか」という結果だけでなく、不貞の内容や夫婦関係の壊れ方を総合的に見ているといえます。
※件数が少なく偏りがあるため、この傾向は参考程度にお考えください。
⑤ お子さんの有無——件数が少なく比較できず
40件のうち28件はお子さんがいる事案で、いない事案は2件だけでした。そのため統計としての比較はできませんが、個々の判決を読むと、幼いお子さんがいることは金額を重くする方向の事情として挙げられることが多く、逆にお子さんが大学生など成長していることを考慮して70万円にとどめた例もありました。
金額が上がる事情・下がる事情
判決の中で、裁判所が金額を決めるときに考慮した事情をまとめると、次のようになります。ご自身の状況に当てはまるものがあるかどうか、確認してみてください。
金額が上がる方向の事情
- 裁判で不合理な言い訳をしたり、うそをついたりした
- 発覚後の対応が悪質だった(例:うその妊娠を告げるなど)
- 不貞が原因で、配偶者が心の病気(適応障害・うつ病など)になった
- 発覚後も、裁判が始まった後も関係を続けた
- 幼いお子さんがいる/不倫相手が出産した
- 長期間・頻繁な不貞、夫婦の財産を不倫相手に多額に使った
金額が下がる方向の事情
- 配偶者のほうが積極的に不貞関係を主導していた
- 不貞より前から、夫婦関係がすでに悪くなっていた
- すでに一部が支払われている(婚姻費用への上乗せなど)
- 不倫相手との間で、すでに示談金が支払われている
- お子さんが成人・大学生など、すでに成長している
- 不貞の期間が短い
不倫相手ではなく、配偶者本人に請求する場合
慰謝料は、不倫相手だけでなく配偶者本人に請求することもできます。今回の40件には配偶者本人に請求した事案が2件含まれており、金額は80万円と450万円と大きく開いていました。450万円の事案は、配偶者が別の女性との結婚を持ち出すなど、ふるまいが特に悪質と判断されたものです。配偶者本人への請求は、不倫相手への請求とは別の観点で判断される傾向がありますので、分けて考える必要があります。
また、配偶者と不倫相手の両方に対して「連帯して支払うように」と命じた事案も4件ありました。この場合、どちらか一方が支払えば、その分はもう一方の支払い義務も減ることになります。
この記事をお読みいただくうえでの注意点
- 集計した40件は、検索でヒットした674件の一部で、東京地方裁判所の判決にかたよっています。全国の傾向をそのまま表すものではありません。
- 判決文から読み取った情報をもとに整理しており、「不明」としている項目は判決文に記載がなかったものです。
- 金額は、裁判で争った末に認められた額です。裁判の前の話し合い(示談)では、お互いの事情や早期解決のメリットを考えて、これと異なる金額で合意することも少なくありません。
- 慰謝料の金額は、あくまで個別の事情で決まります。この記事は目安としてご覧いただき、ご自身の状況については弁護士にご相談ください。
参考:集計した40件の一覧
金額の単位は万円。「慰謝料」は慰謝料そのものの額、「総額」は弁護士費用などを含めて判決で支払いが命じられた額です。No.26は慰謝料の内訳が判決から読み取れないため、集計からは除いています。
一覧表を開く(40件)
| No | 判例番号 | 判決日 | 結婚期間 | 子 | 不貞期間 | 別居 | 離婚 | 慰謝料 | 総額 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | L08032632 | 東京地裁 | 約19年 | あり | 最大3か月程度 | 不明 | 離婚済 | 110 | 121 | 原告妻・被告女性?/配偶者積極・頻度立証不足 |
| 2 | L08032629 | 東京地裁 | 約9年 | あり | 不明 | 不明 | 未離婚 | 180 | 275 | 【配偶者・不貞相手の連帯】配偶者Y2と不貞相手Y1連帯/反訴あり |
| 3 | L08032753 | 東京地裁 | 約43年 | あり | 約4年余(R2頃〜) | あり | 不明 | 150 | 165 | 共有財産から多額流出 |
| 4 | L08032726 | 東京地裁 | 約36年 | あり | 不明 | なし | 不明 | 120 | 132 | 婚姻破綻は否定?要確認 |
| 5 | L08032691 | 東京地裁 | 約11年 | あり | R5.1〜現在(約2年・継続) | あり | 不明 | 160 | 154 | 既払20万円を填補控除・被告開き直り |
| 6 | L08032477 | 東京地裁 | 約37年 | あり | 20年以上(H25.11以降は肉体関係なし) | 不明 | 不明 | 200 | 220 | 請求1億1000万円 |
| 7 | L08032721 | 東京地裁 | 約14年 | あり | 不明 | あり | 未離婚 | 100 | 110 | 【配偶者・不貞相手の連帯】配偶者と不貞相手連帯 |
| 8 | L08032545 | 東京地裁 | 約0.5年 | あり | R4.12〜 | あり | 不明 | 150 | 180 | 破綻の抗弁排斥?・別途60万円 |
| 9 | L08032619 | 東京地裁 | 約9年 | あり | R3.5頃〜継続(2年超) | 不明 | 未離婚 | 200 | 440 | 原告適応障害・訴提起後も継続・調査費等認容 |
| 10 | L08032450 | 東京地裁 | 約1.5年 | あり | 2度(R3.11以降再開) | あり | 離婚済 | 100 | 110 | 【配偶者・不貞相手の連帯】配偶者と連帯・1度目は配偶者が300万円支払済で填補 |
| 11 | L08033164 | 東京地裁 | 約12年 | あり | 継続的(妊娠に至る) | 不明 | 不明 | 150 | 165 | 原告夫→妻の不貞相手男性に請求?/相手方反訴 |
| 12 | L08033128 | 東京地裁 | 約11年 | あり | 長期とはいい難い | あり | 離婚済 | 130 | 143 | 一度離婚後再婚 |
| 13 | L08033085 | 東京地裁 | 約23年 | あり | 不明 | あり | 不明 | 100 | 110 | |
| 14 | L08032916 | 東京地裁 | 約37年 | あり | H3〜現在(30年超) | あり | 離婚済 | 150 | 165 | 不貞相手が配偶者の子を出産・離婚慰謝料構成は否定 |
| 15 | L08032811 | 東京地裁 | 約9年 | あり | 〜R6.2(月1回以上) | 不明 | 不明 | 150 | 165 | 原告適応障害・配偶者が相手に金銭交付 |
| 16 | L08033045 | 東京地裁 | 約13年 | あり | 不明 | なし | 未離婚 | 150 | 150 | 請求は慰謝料500万円のみ |
| 17 | L08032331 | 東京地裁 | 約7.5年 | あり | 不明 | あり | 離婚済 | 80 | 88 | 【配偶者本人に対する請求】元夫→元妻(配偶者本人)への請求・不貞相手側の和解金考慮 |
| 18 | L08032231 | 東京地裁 | 約12年 | 不明 | 不明 | あり | 離婚済 | 170 | 170 | 原告不眠症・うつ病・請求は慰謝料のみ |
| 19 | L08031595 | 東京地裁 | 約24年 | あり | 長期・頻回(配偶者が別女性との婚姻を持ち出す) | あり | 未離婚 | 450 | 450 | 【配偶者本人に対する請求】配偶者本人(夫)への請求・違法性顕著 |
| 20 | L08031556 | 東京地裁 | 約9.8年 | あり | 不明 | あり | 離婚済 | 200 | 200 | 不貞が原因で破綻・被告謝罪の意 |
| 21 | L08031957 | 東京地裁 | 約0.8年 | あり | 約9か月(R4.11〜R5.8・複数回) | あり | 離婚済 | 100 | 110 | 婚姻直後から不貞・示談交渉不成立 |
| 22 | L08031870 | 東京地裁 | 約7年 | あり | 不明 | あり | 離婚済 | 200 | 200 | 配偶者の既払60万円は単独債務部分に充当 |
| 23 | L08031981 | 東京地裁 | 約18年 | あり | R5.3頃〜(数か月以上) | あり | 離婚済 | 150 | 165 | 発覚後に配偶者が別居し離婚 |
| 24 | L08031357 | 東京地裁 | 約12.5年 | あり | R1.12頃〜(発覚まで短期) | 不明 | 離婚済 | 250 | 275 | 【配偶者・不貞相手の連帯】元配偶者と不貞相手連帯・公正証書の離婚慰謝料とは別/内訳は弁護士費用1割と推定 |
| 25 | L07430610 | 東京地裁 | 約5年 | 不明 | 不明 | あり | 未離婚 | 230 | 250 | 被告の応訴態度も考慮 |
| 26 | L07430908 | 東京地裁 | 約7年 | なし | 不明 | あり | 未離婚 | ― | 150 | 調査費用189万円は否定・内訳不明 |
| 27 | L07430906 | 東京地裁 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 | 離婚済 | 150 | 150 | 請求は慰謝料のみ・配偶者からの200万円振込は弁済と認めず |
| 28 | L07232618 | 東京地裁 | 約11年 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 | 250 | 275 | 被告の不合理な弁解・応訴態度を考慮・調査費用は否定/内訳は弁護士費用1割と推定 |
| 29 | L07232586 | 東京地裁 | 約1.5年 | あり | 不明 | 不明 | 離婚済 | 140 | 150 | 被告は当初婚姻事実を知らされず・SNS名誉毀損請求も併合 |
| 30 | L07232514 | 東京地裁 | 約24年 | あり | H26.8頃〜継続 | あり | 未離婚 | 200 | 220 | 原告が精神科通院・仕事にも支障 |
| 31 | L07232730 | 東京地裁 | 約13年 | あり | 不明 | なし | 離婚済 | 100 | 100 | 離婚後も同居して生活 |
| 32 | L07632209 | 東京地裁 | 不明 | 不明 | 長期ではない | 不明 | 未離婚 | 175 | 175 | 破綻なしは減額事情だが、虚偽の妊娠告知等の悪質な事後対応・虚偽主張で増額 |
| 33 | L07632096 | 東京地裁 | 約32年 | あり | 約29年(H2頃〜R1.9) | あり | 未離婚 | 200 | 220 | 婚姻期間の大半に及ぶ不貞 |
| 34 | L07632197 | 東京地裁 | 約22年 | 不明 | H30.3頃〜 | 不明 | 不明 | 150 | 165 | 配偶者からの2000万円弁済の主張は排斥 |
| 35 | L07632116 | 東京地裁 | 約9年 | なし | 不明 | 不明 | 未離婚 | 140 | 154 | 内訳は弁護士費用1割と推定 |
| 36 | L07632411 | 東京地裁 | 不明 | 不明 | 不明 | あり | 不明 | 130 | 143 | 調査費用請求あり/内訳は弁護士費用1割と推定 |
| 37 | L07832592 | 東京地裁 | 約6年 | 不明 | 短期(R4.1・2月にホテル同宿) | あり | 未離婚 | 120 | 132 | 婚姻直後から破綻との抗弁は排斥 |
| 38 | L07832549 | 東京地裁 | 約26年 | あり | 不明 | 不明 | 不明 | 70 | 77 | 子らの年齢等を考慮 |
| 39 | L07832434 | 東京地裁 | 約17年 | 不明 | 約1.5か月(R4.7末〜9.16) | 不明 | 離婚済 | 100 | 110 | 不貞前から婚姻関係が破綻の危機 |
| 40 | L07832419 | 東京地裁 | 約18年 | なし | 長期(H19頃〜継続) | あり | 未離婚 | 200 | 220 | 配偶者が婚費に慰謝料分を上乗せして支払済みを考慮 |
判例番号は判例秘書の文献番号です。判決日の「R」は令和、「H」は平成を表します。
ご自身のケースではいくらになるのか、一緒に整理します
慰謝料を請求したい方も、請求されてお困りの方も、まずはお話をお聞かせください。不貞の期間や夫婦関係の状況、これまでのやり取りをうかがったうえで、見通しと進め方をご説明します。
お電話でのご予約 022-302-5240
初回のご相談は無料です。LINE電話・ZOOMでのオンライン相談にも対応しています。
本記事は2026年10月3日時点の判例データベース(判例秘書 SMART)の検索結果をもとに作成しています。個別の事案についての法的助言ではありません。
