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不貞をした配偶者と不貞相手の責任はどちらが重い?

記事作成日:2023年2月26日
最終更新日:2023年2月26日

1 なぜ不貞当事者の責任割合が問題となるのか

 不貞の責任が問題となる場合、責任主体(加害者)となり得るのは2人です。
 不貞行為はそもそも2人でするものですから、これはいわば当然のことです。

 一般論として、法的責任を負う人物が2人いる場合、その2人はいずれも、「できれば他の人物に責任を負わせたい。自分が負う責任はできるだけ軽減したい。」と考える傾向にあります。
 これは不貞の責任が問われる場合も例外ではなく、例えば不貞相手は、「不貞を働きかけたのは配偶者の側である。私は積極的ではなかったし、責任を問われるべきは配偶者側ではないか。」と考えることになります。

 不貞当事者間の責任割合が問題となるケースの出発点は、以上のような事情にあります。

2 不貞については配偶者側の責任の方が重いという一般論

 不貞当事者間の責任割合に関し、一般的には、「配偶者側の責任の方が重い」と考えられています。
 では、このような考え方はいかなる理由に基づくものなのでしょうか?

 ここで、参考となる裁判例を紹介いたします。
 東京高等裁判所・昭和60年11月20日判決(判例時報1174号73頁)は、不貞に関し配偶者側の責任の方が重いとされる理由を端的に示しています。
 関連する判示部分を以下に引用いたします。

合意による貞操侵害の類型においては、自己の地位や相手方の弱点を利用するなど悪質な手段を用いて相手方の意思決定を拘束したような場合でない限り、不貞あるいは婚姻破綻についての主たる責任は不貞を働いた配偶者にあり、不貞の相手方の責任は副次的なものとみるべきである。けだし、婚姻関係の平穏は第一次的には配偶者相互間の守操義務、協力義務によつて維持されるべきものであり、この義務は配偶者以外の者の負う婚姻秩序尊重義務とでもいうべき一般的義務とは質的に異なるからである」

 要するに、結婚生活の平和は、本来夫婦が互いに協力して維持するべきであり、夫婦の一方がその平和を壊した場合、その責任は第一に平和を壊した配偶者が負うべきということですね。
 もちろん、不貞相手も、他人夫婦の平和を壊してはいけないという義務を負います。ただ、この義務は、夫婦が互いに負う義務とはレベルの異なるものだということです。

 もちろん以上は一般論なので、事案によっては不貞相手の責任を重くみるべき場合もあります。
 例えば、不貞相手が、夫婦の家庭を壊すことを積極的に意図して、主導的に不貞関係を継続したような場合です。

3 責任割合の違いは何に影響を及ぼすのか

 ここまで不貞当事者間の責任割合について説明しましたが、肝心な部分はここからです。
 それは、「不貞当事者間の責任割合の議論は、具体的な結論にどう影響するのか?」という点です。
 抽象的に責任割合を論じることにあまり意味はなく、大事なのは、不貞トラブルの具体的解決内容にどう影響するのかです。

 不貞当事者間の責任割合を論じる意味は、大きく2つあります。


 一つ目は、①被害者に対し支払う慰謝料の額に影響を及ぼすことです。
 二つ目は、②不貞当事者間での慰謝料分担額に影響を及ぼすことです。


 以下、この点について解説いたします。

(1) ①被害者に対し支払う慰謝料の額に及ぼす影響について

 例えば、不貞をされた配偶者から不貞相手に対し、慰謝料として200万円が請求されたとしましょう。
 この場合、不貞相手としては、請求者に対し、「不貞について一番責任が重いのは、あなたの配偶者である。私の責任は副次的なものにとどまるので、200万円もの慰謝料支払義務を負うことはない。」と反論したいところです。

 このような反論に正当性があるか否かに関しては、不貞慰謝料債務が「不真正連帯債務の関係にあること」を考慮しなければなりません。
 「不真正連帯債務」とは、加害者が複数存在する不法行為の場合に、その責任を加害者全員で「連帯して」負わなければならない性質の債務を意味します。
 この「連帯して」というところがポイントで、複数の加害者は、原則として各自が全額の賠償責任を負います。
 この理論を貫くならば、不貞をした配偶者よりも不貞相手の責任の方が軽いとしても、「私の責任は軽いから賠償額は減額されるべき」という反論は通らないことになります。

 不貞慰謝料債務が不真正連帯債務であることと不貞相手の責任の度合いをどのように考慮するかは難しい問題であり、裁判例の判断も分かれます。
 「不真正連帯債務なのだから、不貞相手といえども全額の賠償責任がある」とする裁判例もあれば、「不貞相手の責任は軽いことを考慮し、賠償額の一部だけを連帯させる」とする裁判例もあります。
 筆者が実際に担当した訴訟事案では、「不貞慰謝料の総額は150万円とし、不貞相手にはそのうち75万円を連帯して支払わせる」と判断した判決がありました。これは要するに、不貞相手の支払義務を慰謝料総額の50%に制限したということです。

 裁判例の理論が確立していない状況ではありますが、一部連帯を認める裁判例が存在する以上、「不貞をした配偶者よりも不貞相手の責任が軽いという事情は、不貞相手が被害者に支払うべき慰謝料額に影響を及ぼす」という前提での反論も不合理とはいえません。

(2) ②不貞当事者間での慰謝料分担額に及ぼす影響について

 被害者に対し支払うべき慰謝料額への影響とは別の話として、不貞当事者間での慰謝料分担額への影響という問題があります。
 これは、「不貞慰謝料の総額について、不貞当事者各自の負担額はどうなるか」という問題です。
 不貞相手が被害者から慰謝料を請求され、全額を支払った場合、不貞をした配偶者に対して責任分の負担を求めることができます(これを「求償」といいます。求償の話については別記事にて詳しく解説しておりますので、ご参照ください。)

不貞当事者間の求償について

 例えば先の例で、不貞相手が被害者に対して200万円の慰謝料全額を支払ったとしましょう。
 このままでは、不貞をした配偶者が何の責任も負担することなく不公平です。
 そこで、不貞相手としては、ともに不貞をした配偶者に対し、「私が払った200万円のうち、あなたの責任分を負担してね」と請求(求償)することができるわけです。

 この求償をする段階で、不貞をした配偶者の責任の方が大きいという一般論が活きてきます。
 具体的には、「あなたの責任の方が大きいのだから、200万円のうち6割(120万円)を負担してね」などという請求が可能となります。
 例え被害者に対し全額の慰謝料を支払うことを余儀なくされたとしても、求償をする段階で、不貞の責任割合に関する理論が活きてくるというわけです。

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記事投稿者プロフィール

下大澤 優 弁護士 仙台弁護士会所属 登録番号49627

専門分野:離婚事件、男女関係事件

経歴:静岡県出身。中央大学法学部法律学科、東北大学法科大学院を経て、平成26年1月に弁護士登録。仙台市内の法律事務所での勤務を経て、平成28年1月、仙台市内に定禅寺通り法律事務所を開設し、現在に至ります。主に離婚事件・男女問題トラブルの解決に取り組んでおります。

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