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子の監護者指定・引渡しについて

最終更新日:2022年4月4日

1 はじめに

婚姻中の夫婦が別居をする場合、子どもは父親・母親どちらかと一緒に生活をすることになります。
離婚をする際には子どもの親権者を取り決めるわけですが、離婚に先立つ別居の場面においても、「父母のどちらが子どもと一緒に生活するか」ということは問題になるのです。

夫婦の間で、どちらが子どもと一緒に生活するかを円満に合意できている状況であれば、別居の際にさほどの問題は生じません。
しかし、夫婦の双方が子どもと一緒に別居生活を送ることを望む場合、どちらが子どもを連れて行くかについて話し合いがつかないことも起こり得ます。
「夫婦のどちらが子どもと一緒に生活するべきか」、これが、いわゆる監護者指定の問題です

2 監護権とは何か?

子の監護者指定や引渡しの問題を考えるにあたっては、まず「監護権」とは何かを整理しておく必要があります。

「監護権」とは、子どもの身上監護権と表現されることもあります。
身上監護というと難解ですが、要するに、「子どもと一緒に生活をし、身の回りの世話をしたり、教育をしたりすること」を意味します。

民法820条には、「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」と定められています。
これが、監護権に関する法律上の規定です。
「監護権」は、監護者としての権利であるとともに義務でもあることを忘れてはいけません。

3 監護者を取り決めるべき場合

夫婦が別居をする際、どちらが子どもと一緒に生活するかを円満に取り決めることができたなら、あえて監護者を指定する手続きを講じる必要性はありません。
監護者指定の問題は、夫婦のどちらが子の監護者になるかについて意見が対立する場面で発生します
このような意見の対立が生じる場面は、大きく2つ考えられます。

①別居に際し、十分な話し合いがないまま夫婦の一方が子を連れて行った場合
監護権について対立が生じるケースとして、最も一般的なものです。
子どもを連れて行かれた側は、子どもに戻ってきてもらうことを望みます。
このような場合、父母のどちらが監護者となるべきか、家庭裁判所に判断をしてもらう必要性が生じます。

②別居後、子の監護について支障が生じた場合
①に比べるとケースとしては少ないのですが、別居後、子どもの監護者を変更すべき場合もあり得ます。
例えば、別居の際は母親に子どもの監護を託したものの、その後、母親の監護の仕方に問題が生じた場合です。
具体的には、「子どもの面倒をきちんと看ない」、「子どもを虐待する」といったケースが考えられます。

4 子の監護者を指定してもらうための手続き

4.1 監護者指定の手続きの概要

子どもの監護者の指定を求める場合、家庭裁判所の調停または審判という手続きが用意されています。
これは、家事事件手続法39条の別表第2の3に掲げられた「子の監護に関する処分」としてなされる調停・審判です。

調停を選択した場合、父母の話し合いベースで監護者を取り決めることができないかを検討することになります。
父母の合意が整えば調停は成立し、子どもの監護者が決まります。
調停が成立しない場合、手続きは審判へと移ります。

審判を選択した場合、父母の話し合いではなく、家庭裁判所が父母のどちらを監護者に指定するかを審理し、判断します。
父母は、それぞれ、自らが子どもの監護者としてふさわしいことを裁判所に主張します。

4.2 調停・審判のどちらを選択すべきか

子どもの監護者指定を求める場合、調停または審判のどちらの手続きも選択できます。
ただ、実際には、審判手続きを選択すべき場合の方が圧倒的に多いです。

子どもの監護者に関して対立がある場合、そもそも話し合いによって解決することは難しく、調停を実施しても解決の可能性は低いのです。
このため、あえて調停を選択するメリットは乏しく、審判を申し立てた方が早期解決に繋がります。

なお、子どもの監護者指定事件に関しては「調停前置主義」(家事事件手続法257条)が適用されません
このため、調停を行わずに審判を申し立てることができます。

5 子の監護者を指定する際の判断基準

家庭裁判所が子どもの監護者を父母どちらにするか判断する場合、「子の利益」を最優先に考慮します。
つまり、「子どもと一緒に暮らしたい」という親の希望ではなく、「子どもにとって、どちらの親と暮らすことが望ましいのか」を最優先に考えるのです。

ただ、「子の利益」という概念は抽象的に過ぎます。
実務上は、以下の具体的事情を考慮して監護者指定の判断をすることが一般的です。

5.1 別居前までの子どもの監護状況

別居をするまでの間、「父母のどちらが主な育児を担ってきたか」という事情です。
父母の一方が主な育児を担っていた場合、別居後も引き続き育児を担ってもらうことが適切です。

5.2 別居後の子どもの監護状況

別居後、子どもがどのように日常生活を送っているのかという事情です。
別居後の監護親が子どもをどのように監護しているかを踏まえ、その監護が適切であれば、引き続き監護を担ってもらうことが望ましいといえます。

5.3 父母の監護能力・監護態勢

父母の年齢、健康状態、経済力、監護環境(住居・教育環境など)、子どもに対する愛情の度合い、将来の監護計画、監護補助者の有無、面会交流に関する意向といった事情を考慮し、子どもにとって父母どちらの監護が望ましいかを検討します。

5.4 子どもの事情

子どもの年齢、発育状況、性格、監護環境への適応状況、父母との親和性、意思を考慮し、子どもにとって父母どちらの監護が望ましいかを検討します。

6 子の引渡し

ここまでの解説は、子どもの監護者を父母のどちらに指定するかに関するものです。
しかし、「子どもが相手方の事実上の監護下に置かれている場合」には、単に監護者の指定を求めるだけでは解決を図ることはできません。
この場合には、監護者の指定を求めるとともに、子どもの引渡しを求める必要があります

実際の事案で監護者指定を求める場合、父母の一方が子どもを連れて別居をしてしまい、子どもを連れて行かれた側が再び子どもと生活することを望む類型が多いです。
このため、子どもの監護者指定と引渡しをワンセットにして審判が申し立てられるケースが多数派です。

7 仮の監護者指定・引渡し(審判前の保全処分)

ここまで解説をしたのは、通常の審判手続きによって子どもの監護者指定・引渡しを求める場合(これを「本案」といいます)でした。
しかし、通常の審判手続きによって審理を進めると、家庭裁判所の判断が出るまでには数ヶ月の時間がかかります

子どもを一方的に連れ去られてしまった事案等の場合、早期に子どもを従前の監護状況に戻す必要性が高く、通常の審判手続きを待つことが適切ではないことがあります。
このような場合には、仮の監護者指定・子の引渡し(審判前の保全処分)の申し立てをすることができます。

仮の監護者指定・引渡し(審判前の保全処分)とは、通常の審判手続きに先行して、子どもの監護者指定・引渡しについて仮の判断をする手続きです。
ただし、仮の判断によって子どもの監護状況に変更を生じさせることには慎重でなければならないため、通常の審判手続きとは異なり、以下①・②の特殊な要件が課されます。

①本案が認容される蓋然性
本案(通常の審判手続き)によって監護者指定・引渡しが認められる可能性が高いことが必要です。

②保全の必要性
「子その他の利害関係人の急迫の危険を防止するため必要があるとき」(家事事件手続法157条1項)を意味します。
具体的には、父母の一方が子どもを一方的に連れ去った場合、子どもに対する虐待が生じている場合、監護環境の急激な変化によって子どもに悪影響が生じている場合などが想定されます。

8 手続き選択のフローチャート

子の監護者指定について、手続き選択をフローチャートにすると次のとおりです。
子の監護者指定事件は、子の引渡しを併せて申し立てるべきか、審判前の保全処分を申し立てるべきか、判断が複雑となります。
特に、審判前の保全処分の申し立てを検討される場合は、弁護士に相談の上で適切な方針を立てることをお勧めいたします

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記事投稿者プロフィール

下大澤 優 弁護士 仙台弁護士会所属 登録番号49627

専門分野:離婚事件、男女関係事件

経歴:静岡県出身。中央大学法学部法律学科、東北大学法科大学院を経て、平成26年1月に弁護士登録。仙台市内の法律事務所での勤務を経て、平成28年1月、仙台市内に定禅寺通り法律事務所を開設し、現在に至る。主に離婚事件・男女問題トラブルの解決に取り組んでいる。

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