親権について(令和8年改正民法対応)
記事更新日:2026年10月11日
2026年(令和8年)4月1日、離婚後の子どもの養育に関するルールを見直した改正民法が施行されました。これまで、離婚後の親権者は父母のどちらか一方に決めなければなりませんでしたが、改正後は、父母の双方を親権者とする「共同親権」を選べるようになっています。
このページでは、親権の基本と、改正によって変わった点を解説します。内容は、東京家庭裁判所の裁判官らが改正法の運用を検討してまとめた解説書に沿っています。
改正のポイント
- 離婚後の親権は、父母の双方(共同親権)とすることも、一方(単独親権)とすることもできるようになりました。
- 話し合いで決まらないときは、家庭裁判所が決めます。虐待やDVのおそれがある場合などは、必ず単独親権になります。
- 共同親権は、子どもと一緒に暮らすことを意味しません。子どもがどちらと暮らすかは、親権とは別に決めます。
- 共同親権でも、日常のことや急を要することは、父母の一方だけで決められます。
- 協議離婚では、親権者を決める調停や審判を申し立てていれば、親権者が決まる前でも離婚届を出せるようになりました。
- 一度決めた親権者は、家庭裁判所の手続で変更できます。改正前に離婚した方も対象です。
親権とは何か
親権とは、未成年の子どもを育て、教育し、子どもの財産を管理する権利と義務のことです。子どもがどこに住むかを決めることや、子どもに代わって契約を結ぶことも、親権に含まれます。
改正民法は、親権を「子の利益のために」行使しなければならないと定めました。親権は親の権利であると同時に、子どもに対する義務でもあることが、条文のうえで明確になっています。
あわせて、親の責務についての規定が新しく設けられました。父母は、子どもの人格を尊重し、年齢や発達の程度に配慮して養育し、自分と同じ程度の生活ができるように扶養しなければなりません。また、子どもの利益のために、互いの人格を尊重して協力しなければなりません。この責務は、結婚しているかどうか、親権者であるかどうかにかかわらず、すべての父母が負います。
離婚後の親権は「共同」か「単独」かを選ぶ
| 改正前 | 改正後(2026年4月1日から) |
|---|---|
| 離婚後の親権者は、父母のどちらか一方に決める(単独親権のみ) | 父母の双方を親権者とすること(共同親権)も、一方を親権者とすること(単独親権)もできる |
結婚しているあいだは、父母が共同で親権を行使します。改正前は、離婚するときに必ずどちらか一方を親権者に決めなければなりませんでした。改正後は、離婚したあとも父母の双方が親権者であり続けることを選べます。
共同親権にするか単独親権にするかは、まず父母の話し合いで決めます。話し合いで決まらないときや、裁判で離婚するときは、家庭裁判所が決めます。
共同親権と単独親権のどちらかが原則で、もう一方が例外、という関係にはありません。それぞれの家庭の事情に応じて、子どもの利益を最優先に決めることとされています。
1枚でわかる、共同親権制度の概要
共同親権か単独親権かの判断のしかた、共同親権になった場合に父母が共同で決めること・一方だけで決められること、意見が対立したときの手続を、1枚の図にまとめました。それぞれの内容は、このあとの項目で順に説明します。
話し合いで決まらないときの、裁判所の判断
必ず単独親権になる場合
共同親権とすることで子どもの利益が害されると認められるときは、裁判所は必ず父母の一方を親権者と定めます。法律は、その例として次の2つを挙げています。
- 父または母が、子どもの心身に害悪を及ぼすおそれがあるとき。子どもへの虐待のおそれがある場合が典型です。
- 父母が共同して親権を行うことが難しいとき。父母の一方が、他方から暴力などを受けるおそれがある場合が典型です。解説書は、身体的な暴力に限らず、精神的・経済的・性的なDVを受けるおそれがあり、父母が関わりを持つこと自体が相当でない場合も含まれるとしています。
解説書によれば、うそや重大な約束違反を繰り返す、相手の人格を否定する言動を執拗に繰り返すなど、将来にわたって最低限の協力関係すら望めない場合も、2つ目にあたることがあります。
それ以外の場合は、事情を総合して判断する
上の場合にあたらないときは、裁判所が、子どもの利益のために次の事情を総合して、共同親権か単独親権かを決めます。
- 父母と子どもとの関係。これまでの親権の行使のしかた、子どもを父母の争いに巻き込まない配慮があるか、養育費の支払いなど親としての責務を果たしているか、子どもの気持ちや意向などが考慮されます。年齢の高い子どもの場合は、子どもの意向がより重視されます。
- 父と母との関係。夫婦の関係と親子の関係を切り分けて、子どものために協力できるか、そのような関係を築くことが期待できるかが検討されます。
- その他一切の事情。
解説書は、ここでいう協力関係について、頻繁な連絡や友好的な関係までは必要なく、親権を共同で行使するために最低限必要な意思疎通ができれば足りるとしています。第三者を介してやり取りする程度の関係でも、安定したやり取りができるなら、協力関係が認められる場合があるとされています。
反対に、子どもと同居する親が、相手に暴力などのおそれがないのに、正当な理由なく連絡や協議を拒んでいる場合に、それだけで「協力関係を築けない」と認めることには、慎重な検討が必要とされています。父母の双方が単独親権を主張していても、裁判所が共同親権と定めることはあり得ます。
子どもがどちらと暮らすかは、親権とは別に決める
改正前は、親権者になった親が子どもと暮らすのが通常でした。そのため、「親権を争う」ことは、「子どもがどちらと暮らすかを争う」こととほぼ同じ意味でした。
改正後は、この2つが切り離されます。共同親権の場合、親権者であることは、子どもと同居することを意味しません。子どもがどちらと暮らすかは、父母が話し合って決め、決まらないときは家庭裁判所の手続で決めることになります。
裁判所が、父母のどちらが子どもと暮らして日常の世話をするのがよいかを判断するときの考え方は、改正前と基本的に変わりません。解説書は、次の4つの着眼点を挙げています。
- これまでの監護の状況
- 監護の態勢
- 子どもとの関係性
- もう一方の親と子どもとの関係に対する姿勢
具体的には、これまでと現在の世話の状況、父母の健康状態や経済状況、住まいや教育の環境、手伝ってくれる人がいるか、子どもの年齢や発達の状況、環境の変化に適応できるか、父母それぞれとの結びつき、子どもの気持ちや意向、親子の交流に対する姿勢、きょうだいに関する事情などが考慮されます。
子どもと暮らす親をめぐる争いについては、子の監護者指定・引渡しのページもご覧ください。
共同親権で、一人で決められること・二人で決めること
父母の双方が親権者であるときは、親権を共同で行使するのが原則です。ただし、すべてを二人で決めなければならないわけではありません。改正民法は、父母の一方だけで決められる場合を明確にしました。この整理は、離婚後の共同親権だけでなく、結婚しているあいだにも当てはまります。
| 一方だけで決められること | 父母が共同で決めること |
|---|---|
日常の行為
|
|
表の例は、解説書が挙げているものです。実際にどちらにあたるかは、個別の事情によって変わることがあります。
共同で決めることについて意見が合わないとき
進学先や転居など、共同で決めるべきことについて父母の意見が合わないときは、家庭裁判所に申し立てて、その事項について親権を行使する人(親権行使者)を父母のどちらかに決めてもらうことができます。改正で新しく設けられた手続です。
この手続では、「進学全般」や「教育に関すること」のような広い決め方はできません。「高等学校との在学契約の締結」のように、いま問題になっている事項を特定する必要があります。まだ争いになっていない将来のことについて、あらかじめ決めてもらうこともできません。
裁判所は、父母の考えのどちらが優れているかを直接決めるのではありません。その事項について、父母のどちらが子どもの利益にかなう判断をすることが期待できるか、子どもの意思はどうかを考慮して、親権行使者を決めます。
監護者や監護の分担を決めておく方法
共同親権としたうえで、子どもの世話について次のような取り決めをすることもできます。
- 監護者を定める。監護者になった親は、子どもの世話や教育、住む場所について、日常の行為にとどまらない重要なことも一人で決められます。もう一方の親は、これを妨げてはなりません。ただし、子どもに代わって契約を結ぶことや財産の管理は、監護者の権限に含まれません。
- 監護を分担する(監護の分掌)。平日と休日で世話をする親を分ける方法や、教育や医療といった事項ごとに担当する親を決める方法があります。改正で、このような分担ができることが明確になりました。
解説書は、監護者を定めるともう一方の親の関わりが大きく制限されることから、共同親権としながら監護者を定めるべき事案は多くないとしています。どの方法が合うかは、父母の関係や争いの内容によって異なります。
親権者が決まる前に離婚届を出せる場合
改正前は、協議離婚をするとき、親権者を決めなければ離婚届が受理されませんでした。このため、DVなどの事情で早く離婚したい側が、相手の求めに安易に応じてしまい、親権者の決め方が適正でなくなるおそれがあると指摘されていました。
改正後は、親権者について話し合いがまとまっていなくても、親権者を決めるための調停または審判を家庭裁判所に申し立てていれば、離婚届が受理されます。
- 離婚届を出してから親権者が決まるまでのあいだは、結婚しているときと同じく、父母の双方が親権者です。
- この申立ては、家庭裁判所の許可がなければ取り下げることができません。離婚だけが成立して、親権者が決まらないままになるのを防ぐためです。
- この仕組みは協議離婚に限られます。調停や裁判で離婚するときは、離婚と同時に親権者を決めます。
一度決めた親権者を変更する
離婚のときに決めた親権者は、子どもの利益のために必要があるときは、家庭裁判所の手続で変更できます。父母の合意だけで変更することはできず、調停または審判が必要です。
改正により、一方の単独親権からもう一方の単独親権への変更に加えて、共同親権から単独親権へ、単独親権から共同親権への変更もできるようになりました。また、父母などの親族だけでなく、子ども本人も変更を申し立てられるようになっています。
変更が認められるかどうかの考え方
父母の話し合いで決めた親権者を変更する場合、裁判所は、その話し合いの経過と、その後の事情の変化を中心に考慮します。
- 話し合いの経過。DVなどを背景に、対等でない関係のもとで決められたものではないかが検討されます。調停を利用したか、公正証書を作ったかといった事情も考慮されます。
- その後の事情の変化。解説書は、気持ちが変わった、一時的な出来事があったというだけでは足りず、取り決めの前提になった重要な事情が変わったことが必要としています。
変更後の親権を共同とするか単独とするかは、離婚のときと同じ枠組みで判断されます。虐待やDVのおそれなど、必ず単独親権になる事情があるときは、共同親権に変更することはできません。
改正前に離婚した方へ
2026年3月までに離婚して単独親権になっている場合でも、改正後のルールにより、共同親権への変更を家庭裁判所に申し立てることができます。自動的に共同親権に変わることはありません。
解説書は、法律が改正されたこと自体は、親権者を変更する理由にはならないとしています。重視されるのは、離婚してから現在までに、父母と子どもとの関係、父と母との関係がどのように築かれてきたかです。親子の交流(面会交流)や養育費について父母がどのようにやり取りをしてきたか、相手への配慮があったかが、有力な判断材料になるとされています。
このページをお読みいただくうえでの注意点
- このページは、東京改正家族法研究会編著『詳解 令和6年改正家族法 改正のポイントと主文例・条項例・書式』(日本加除出版)の第2章から第5章、第10章に沿って作成しました。本文で「解説書」としているのは、この本のことです。
- 改正法は施行から間がなく、裁判例の積み重ねはこれからです。解説書も、施行前の検討に基づくものであると断っています。実際の運用は、今後変わっていく可能性があります。
- どのような結論になるかは、個別の事情によって異なります。このページは、特定の結果をお約束するものではありません。
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