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相手方が調停で決めた約束を守らない場合の対処法(履行勧告)

記事作成日:2023年4月23日
記事更新日:2023年4月23日

1 調停で取り決めた約束が守られないことがある

 無事に離婚調停が成立し、離婚条件が取り決められたとしても、相手方が約束を守らないことがあります。
 例えば、取り決めた養育費を支払わない、取り決めた面会交流が実施されない、などという場合です。

 このような場合は、約束を守ってもらうための措置を検討する必要があります。

2 取り決めた約束を実現するための措置

 取り決めた約束を実現しようと考えたとき、まず思い浮かぶのは強制執行です。
 例えば、養育費の不払いが生じている場合に、相手方の給与を差し押さえて強制的に養育費を回収する場合です。
 強制執行は、取り決めた約束を実現するための強力な手段ですから、約束不履行が起きた場合にはまず検討すべき措置です。

 他方で、強制執行に着手することが躊躇される場合や、そもそも強制執行という手続で約束を実現することが難しい場合もあります。
 例えば、1回だけ養育費が不払いとなった場合などは、相手方がたまたま支払いができなかっただけなのか、意図的に不払いをしているのかの判断が難しく、直ちに強制執行に着手すべきか迷うことがあります。
 また、面会交流に関しては、そもそも強制執行(間接強制)という手続で解決することが難しい場合も多いため、強制執行という選択肢をとれないこともあります。

 ただちに強制執行に着手することが難しい状況のもと、有効な対策になり得るのは、「履行勧告」という手続です。

3 履行勧告とは何か

 それでは、履行勧告とは一体どのような手続なのでしょうか?
 まずは家事事件手続法の条文を見てみましょう。

 家事事件手続法289条1項は、次のように規定します。

権利者の申出があるときは、その審判(抗告裁判所又は高等裁判所が義務を定める裁判をした場合にあっては、その裁判。次条第一項において同じ。)で定められた義務の履行状況を調査し、義務者に対し、その義務の履行を勧告することができる。」(家事事件手続法289条1項抜粋)

 家事事件手続法289条1項は「審判」によって定められた義務に関する規定ですが、同法289条7項によって、「調停又は調停に代わる審判において定められた義務」にも準用されます

 注意しなければならないのは、義務者に対し、その義務の履行を勧告することができる。」という部分です。
 裁判所が行うことのできる措置は、あくまでも「勧告」です。約束を守らない相手方に対し義務の履行を「強制」することはできず、この点において強制執行手続とは明確な違いがあります。

4 履行勧告手続の流れ

 次に、実際に履行勧告の申出を行う場合の流れについて解説いたします。

 まずは、履行勧告の申出をしなければなりません。
 この申出は、書面で行うこともできますし、口頭で行うこともできます

 きちんと事実経過を整理して申出をするためには、口頭よりも書面の方がよいでしょう。
 参考までに、履行勧告申出書の書式は次のとおりです。

履行勧告申出書の書式
履行勧告申出書の書式

 履行勧告の申出をした後、裁判所が相手方の義務履行状況を調査し、必要があると判断されれば履行勧告がなされます。
 申出をした後、裁判所から必要な事情の聴取(電話での聴き取りがメインです)がなされることがあるので、きちんと対応できるよう準備をしておきましょう。

 最終的に、履行勧告が相当とされれば、相手方に対し履行勧告が発せられます。
 具体的には、裁判所から相手方に対し、調停での約束を守るよう促す文書が発送されます。

5 履行勧告のメリット・デメリット

 以上が履行勧告についての解説です。
 履行勧告のメリットは、①費用がかからないこと、②手続が比較的スピーディであること、③強制執行ができない約束についても対応可能なこと、といった点にあります。
 他方で、履行勧告のデメリットは、あくまでも勧告である以上、強制的に約束を実現することはできないこと、にあります。

 そもそも相手方が約束を守る気がない事案などでは、履行勧告はあまり有効ではなく、早期に強制執行を検討した方がよいでしょう。
 他方で、相手方が完全に開き直っている場合でない限り、履行勧告をすることによって約束が実現される事案もそれなりにあります。
 履行勧告と強制執行は二者択一ではなく、履行勧告→強制執行という段階を踏むこともできますので、強制執行に進む前に履行勧告を検討してみる価値は十分あるでしょう。

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記事投稿者プロフィール

下大澤 優 弁護士 仙台弁護士会所属 登録番号49627

専門分野:離婚事件、男女関係事件

経歴:静岡県出身。中央大学法学部法律学科、東北大学法科大学院を経て、平成26年1月に弁護士登録。仙台市内の法律事務所での勤務を経て、平成28年1月、仙台市内に定禅寺通り法律事務所を開設し、現在に至ります。主に離婚事件・男女問題トラブルの解決に取り組んでおります。

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