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悪意の遺棄を認めた裁判例の紹介

最終更新日:2022年5月19日

1 はじめに

民法770条1項は、「配偶者から悪意で遺棄されたとき」(以下、「悪意の遺棄」)には離婚事由が認められると定めています(民法770条1項2号)。
実際の法律相談においても、悪意の遺棄に該当するか否かを質問されるケースは多々あります。

今回の記事では、悪意の遺棄について具体的なイメージをもっていただくため、実際の裁判例を紹介いたします。

2 東京地方裁判所・平成29年9月29日判決

ご紹介する裁判例は、東京地方裁判所・平成29年9月29日判決です。
この裁判例では、悪意の遺棄に該当することを理由とした慰謝料請求がなされ、結論として悪意の遺棄を理由とする慰謝料請求が認められました。

(1) 事案の概要

登場人物は、離婚をした元夫婦です。
裁判の原告は元妻(以下「X」とします)であり、被告は元夫(以下「Y」とします)です。

XとYは、平成26年4月30日に婚姻しました。
ところが、Yは、平成27年1月19日(婚姻してから8か月後)、Xと同居するマンションから転居し、Xとの別居を開始しました。
そして、XとYは、平成27年11月27日に協議離婚をしました。

離婚成立後、XはYに対し、悪意の遺棄を理由とする慰謝料請求訴訟を提起しました。
すなわち、X・Yの別居はYによって一方的に開始されたものであり、このようなYの行動は夫婦間の同居義務・相互協力義務に違反し、悪意の遺棄に該当するという主張です。

(2) 裁判所の判断

上記事案のもと、東京地方裁判所・平成29年9月29日判決は次のように判示し、Yによる悪意の遺棄を認めました。

「被告が原告と別居する際の態様及び被告の別居後における言動に照らしてみると、被告は、原告に対し、事前の説明をすることもなく、一方的に別居を開始し、関係の修復を求められても、具体的な同居に向けた協議・提案等を行うことなく、これを拒絶して別居を継続していたものということができるのであり、被告による当該別居について正当な理由があるものとはいい難く、同居義務(民法752条)に反し、原告に対する悪意の遺棄に当たるというのが相当である(なお、証拠(原告本人)によると、原告は、被告が本件マンションから転居して別居した後、間もなく本件マンションを退去したものと認めることができるが、被告による一方的な別居そのものを正当化する理由とはならない。)。」

(3) 裁判所の判断のポイント

裁判所が悪意の遺棄を認めるに至ったポイントは、次の事情にあります。

①YがXに対し、事前の説明をすることなく一方的に別居を開始したこと
②Xが関係の修復を求めても、Yがこれを拒絶したこと

Yが、正当な理由もなく一方的に別居を開始し、その後も関係修復のための努力を行わなかったことが重視されています。

逆にいえば、別居を開始するにあたり正当な理由がある場合、悪意の遺棄は成立しにくくなります。
例えば、夫のDVに耐えかねた妻が一方的に別居を開始した場合、妻が別居を開始したことには正当な理由があり、悪意の遺棄に該当するとはいえないでしょう。

「一方的な別居は悪意の遺棄に該当する」という単純な図式は成り立たず、別居の理由や、別居後の対応といった事情を踏まえて判断をしなければなりません。

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記事投稿者プロフィール

下大澤 優 弁護士 仙台弁護士会所属 登録番号49627

専門分野:離婚事件、男女関係事件

経歴:静岡県出身。中央大学法学部法律学科、東北大学法科大学院を経て、平成26年1月に弁護士登録。仙台市内の法律事務所での勤務を経て、平成28年1月、仙台市内に定禅寺通り法律事務所を開設し、現在に至る。主に離婚事件・男女問題トラブルの解決に取り組んでいる。

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