最終更新日:2022年5月26日
1 はじめに
既婚者の男女同士が不貞関係をもつことを、俗に「ダブル不倫」といいます。
ダブル不倫の場合であっても、不貞をされた側が、不貞当事者に対し慰謝料を請求できることは当然です。
ただ、ダブル不倫の場合、不貞当事者の一方が独身である事案と比べ、やや特殊な問題が発生します。
この記事では、ダブル不倫事案の特殊性を踏まえた解決方法について解説いたします。
2 不貞慰謝料請求についての一般論
不貞をされた側は、不貞をした配偶者と不貞相手に対し慰謝料を請求することができます。
この結論は、広く知られています。
簡単にいえば、「不貞をされた側→不貞をした配偶者・不貞相手」(→は慰謝料請求の方向を意味します)という図式が成り立つわけです。
3 ダブル不倫の特殊性
ダブル不倫の場合、「不貞をされた側→不貞をした配偶者・不貞相手」という単純な図式が成り立ちません。
不貞相手も既婚者である以上、不貞相手の配偶者も不貞の被害者となります。
例えば、A夫婦とB夫婦がおり、A夫婦の夫とB夫婦の妻が不貞関係をもったとします。
そうすると、慰謝料請求の図式は次のとおりとなります。
①「A妻→A夫・B妻」
②「B夫→B妻・A夫」
つまり、A妻からの慰謝料請求と、B夫からの慰謝料請求が飛び交うかたちになるのです。
4 ダブル不倫の特殊性を踏まえた解決方法
ダブル不倫の場合に考えなければならないことは、先の例でいえば、「A夫婦の妻からの慰謝料請求とB夫婦の夫からの慰謝料請求をともに認めた場合、どのような結果になるか」という点です。
例えば、A妻がB妻に対し請求する慰謝料と、B夫がA夫に対し請求する慰謝料がともに100万円であると仮定します。
そして、B妻・A夫がそれぞれ100万円の慰謝料を支払う場合、A妻はB妻から100万円を受領し、B夫はA夫から100万円を受領することになります。
しかし、A夫婦の家計はひとつですし、B夫婦の家計もひとつです。
そうすると、実態としては、「A夫婦・B夫婦の家計から、それぞれ100万円が移動しただけ」という結果になります。
これでは、単に100万円を交換しただけのかたちとなり、あまり意味はありません。
このような実態を考慮し、ダブル不倫の場合、「A夫婦・B夫婦ともに慰謝料をゼロとする解決」がされることがあります。
不貞の被害を受けた側からすれば納得し難い結論ですが、夫婦の家計をひとつとする以上、このような結論がA夫婦・B夫婦双方にとって妥当な解決となり得るのです。
5 上記の解決方法が妥当しない場合
ダブル不倫事案において、前記4の解決方法をとることができない場合があることに注意が必要です。
これはどのような場合かといいますと、「一方の夫婦が離婚を決意したとき」です。
離婚をする場合、もはや夫婦の家計がひとつという理屈は通用しません。
離婚を決意した不貞被害者は、「私はきちんと慰謝料請求をする。相手方から私の配偶者に慰謝料請求がされても、私には関係がない話である。」という考え方に至ります。
双方の夫婦が婚姻関係を維持する場合には慰謝料ゼロの解決もあり得ますが、どちらかが(あるいは両方が)離婚を決意した場合には、不貞当事者はキッチリと慰謝料を支払わざるを得ません。
ダブル不倫事案で不貞慰謝料の交渉をする場合は、相手方夫婦の婚姻関係がどのような状態にあるのかを見極めつつ方針を考えなければなりません。
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記事投稿者プロフィール
下大澤 優 弁護士 仙台弁護士会所属 登録番号49627
専門分野:離婚事件、男女関係事件
経歴:静岡県出身。中央大学法学部法律学科、東北大学法科大学院を経て、平成26年1月に弁護士登録。仙台市内の法律事務所での勤務を経て、平成28年1月、仙台市内に定禅寺通り法律事務所を開設し、現在に至ります。主に離婚事件・男女問題トラブルの解決に取り組んでおります。