最終更新日:2022年10月2日
1 離婚をするときに公正証書を作成することは必要か?
離婚に関するご相談を受けると、「離婚をするときには公正証書を作成したい」というご要望をいただくことが多くあります。
しかし、よくよく話を聞いてみると、公正証書を作成する必要性が乏しい場合でも、公正証書の作成を希望される方がいらっしゃいます。
これはおそらく、「そもそも公正証書を作成することのメリットはどこにあるのか」という点について広く知られておらず、誤解が生じているからだと思われます。
この記事では、「離婚するときに公正証書を作成するメリットは何か」、言い換えれば、「どのような事案で公正証書を作成する必要性があるのか」について解説いたします。
2 公正証書とは何か
そもそも、公正証書とは何なのでしょうか?
辞書的な意味では、公正証書とは,「私人(個人又は会社その他の法人)からの嘱託により,公証人がその権限に基づいて作成する文書」をいいます。
例えば、公正証書によって契約書を作る場合、公証人が契約内容を文書化し、その契約がなされたことを公に証明できることになります。
公正証書が有する最も大きな特徴は、金銭債務に関し、強制執行認諾条項を付けられることにあります。
公正証書に、「債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述」を記載すると、債務者が支払いを怠った際に、裁判を経ることなく強制執行をすることができます。
つまり、通常であれば①裁判で勝訴判決を得る→②判決に基づいて強制執行をする、とい手続きを踏まなければならないところを、いきなり②を実行できるということです。
裁判手続を省略できることは大きなメリットであり、この点が、通常の契約書と公正証書との大きな違いです。
3 離婚条件を公正証書にした方がよい場合
公正証書を作成するメリットは、前記2のとおりです。
このメリットをよく理解すれば、離婚事件において公正証書を作成した方がよい場合がわかります。
離婚事件において公正証書を作成した方がよいのは、「夫婦間で何らかの金銭支払を合意する場合」です。
例えば、慰謝料・養育費・財産分与といった合意をする場合には、支払う側が約束を破った場合に備え、公正証書を作成しておくメリットが大きいといえるでしょう。
特に養育費は、将来にわたって支払いが続くものであり、途中で不払いが発生するリスクが高いものです。
養育費の支払いが滞った際に裁判を起こすのは大きな負担ですから、すぐに強制執行ができるよう、公正証書を作成しておく必要性が極めて高いといえます。
他方で、金銭支払の合意をしない場合、公正証書を作成する必要性はさほどありません。
この場合は、あえて公正証書を作成しなくとも、いわゆる「離婚協議書」を夫婦間で作成すれば足りうケースが多いでしょう。
なお、年金分割の合意(いわゆる合意分割)をする場合には、公証役場で公正証書を作成するか、夫婦間で作成した合意書に公証人の認証を受ける必要があるため、公証人の関与が必須となります。
この点については、以下のページで詳しく解説しておりますのでご覧ください。
記事投稿者プロフィール
下大澤 優 弁護士 仙台弁護士会所属 登録番号49627
専門分野:離婚事件、男女関係事件
経歴:静岡県出身。中央大学法学部法律学科、東北大学法科大学院を経て、平成26年1月に弁護士登録。仙台市内の法律事務所での勤務を経て、平成28年1月、仙台市内に定禅寺通り法律事務所を開設し、現在に至ります。主に離婚事件・男女問題トラブルの解決に取り組んでおります。