最終更新日:2022年9月24日
1 GPSを利用した不貞(浮気)調査は違法なのか?
配偶者が不貞(浮気)をしているのではないかと疑った場合、不貞の証拠を確保するために行動をされる方は多くいらっしゃいます。
不貞の証拠として比較的容易に入手できるものは、配偶者のLINE履歴やメール履歴です。
しかし、配偶者の携帯電話にパスコードロックがかかっていると、LINEやメールを調べることが難しい場合もあります。
また、LINEやメールを調べても決定的な証拠が掴めないこともあります。
LINEやメールなどにより不貞の証拠を確保することが難しい場合、「GPSによって配偶者の位置情報を追跡し、ホテルへの滞在履歴を掴めないか」と考える方がいらっしゃいます。
しかし、GPSを利用した不貞調査を行う場合、その手段が合法なのか違法なのかを意識しておかないと、思わぬトラブルが生じます。
この記事では、GPSを利用した不貞(浮気)調査が違法となり得るのかについて解説いたします。
2 ストーカー規制法違反に該当する可能性について
GPSを利用した不貞(浮気)調査が合法であるか違法であるかを考える際、まず検討しなければならないのは「ストーカー規制法」(正式名称は「ストーカー行為等の規制等に関する法律」)です。
ストーカー規制法は、令和3年5月26日に大きく改正され、「GPS機器等を用いた位置情報の無断取得等」が規制されることになりました。
「GPS機器等を用いた位置情報の無断取得等」の規制は、令和3年8月26日から施行されています。※参考として、警察庁のWEBサイトへのリンクはこちら
改正ストーカー規制法が定める「GPS機器等を用いた位置情報の無断取得等」とは、簡単にいえば以下の2つの行為を意味します。
①アプリケーション等を利用して、対象者スマートフォン等の位置情報を無断で取得すること
②対象者の所持物に無断でGPS装置を設置し、位置情報を取得すること
上記②は古典的な方法です。対象者の車にGPS装置を設置して位置情報を把握することが典型例です。
これに対し①は、現代的な方法といえるでしょう。対象者のスマートフォンに位置情報取得アプリをインストールし、位置情報を把握する方法が典型例です。
いずれの手段も不貞(浮気)調査としては有効であり、実際に行動に移す方は多いと思われます。
では、このような調査方法はストーカー規制法違反になるのでしょうか?
結論としては、不貞(浮気)調査を目的とする限り、GPSを利用した調査はストーカー規制法違反とはなりません。
この理由は、ストーカー規制法違反となる「つきまとい等」の要件として、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」が存在しなければならないからです。
不貞(浮気)調査をする場合、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」が欠けることが通常ですから、ストーカー規制法違反とはならないわけです。
3 各都道府県が定める迷惑防止条例違反に該当する可能性について
GPSを利用した不貞(浮気)調査がストーカー規制法違反に該当するかは前記のとおりですが、見落としがちなのは各都道府県が定める迷惑防止条例違反該当性です。
実は、ストーカー規制法が規制する「つきまとい等」行為については、迷惑防止条例によっても規制されている場合が多々あります。
ストーカー規制法と迷惑防止条例とで何が違うのかというと、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」が必要であるか否かです。
前記のとおり、ストーカー規制法が規制する「つきまとい等」には、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」が必要でした。
しかし、迷惑防止条例が規制する「つきまとい等」には、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」が必要とされていないのです。
これはつまり、単に不貞(浮気)調査をするためにGPSを利用した場合であっても、迷惑防止条例違反に該当してしまう可能性が生じるということです。
ストーカー規制法がGPSの利用を規制対象としたのは令和3年5月26日の改正以降であり、比較的最近のことです。
このため、各都道府県の迷惑防止条例では、いまだGPSの利用を規制対象としていないものが大多数だと思われます。
しかし、本記事の執筆時点で、いくつかの都道府県が迷惑防止条例を改正し、ストーカー規制法と同じくGPSの利用を規制対象とする動きがあるようです。
仮に迷惑防止条例が改正されれば、不貞(浮気)調査のためのGPS利用が条例違反となる可能性は高いと思われます。
私が活動する宮城県では、GPS利用を規制対象として迷惑防止条例が改正されるといった報道はまだありません。
しかし、東京都・埼玉県では改正に向けた動きがあるようで、既に報道もされています。
4 まとめ
以上のとおり、GPSを利用した不貞(浮気)調査は、今後、迷惑防止条例が改正されることによって規制対象となる可能性があります。
ご自身が居住する都道府県の迷惑防止条例の改正状況をよく把握し、リスクを検討した上での調査が必要になるといえるでしょう。
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記事投稿者プロフィール
下大澤 優 弁護士 仙台弁護士会所属 登録番号49627
専門分野:離婚事件、男女関係事件
経歴:静岡県出身。中央大学法学部法律学科、東北大学法科大学院を経て、平成26年1月に弁護士登録。仙台市内の法律事務所での勤務を経て、平成28年1月、仙台市内に定禅寺通り法律事務所を開設し、現在に至ります。主に離婚事件・男女問題トラブルの解決に取り組んでおります。