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住宅ローンの支払いによって婚姻費用が減額されるか

最終更新日:2022年2月27日

1 本記事のポイント

本記事では、住宅ローンを抱えつつ別居をした場合の婚姻費用額について解説をいたします。

より具体的に言いますと、本記事が想定しているのは、「配偶者と別居をしたけれども、配偶者が住む自宅の住宅ローンの支払いを続けているケース」です。

例えば、夫が自宅を出て妻と別居を開始しつつ、妻が住む自宅の住宅ローンの支払いを継続する場合がこれに該当します。

住宅ローンの債務者が夫である場合、自宅を出ても住宅ローンの支払いを継続せざるを得ないことは多々あります。

夫にしてみれば、「自分が住んでいない自宅のローンを払いつつ、妻の生活費(婚姻費用)も払わなければならないの?」という疑問を抱くわけです。

2 住宅ローンの支払いによって婚姻費用が減額される場合がある

結論を先に示しますと、上記の事例では、夫が支払う住宅ローンを考慮し、婚姻費用が減額される可能性があります。

これは、「夫が住宅ローンを支払うことによって、妻の住居費をも支払う関係にある」からです。もう少し詳しく説明いたします。

そもそも婚姻費用はどのように計算されるかというと、夫・妻それぞれの額面年収から、公租公課・職業費・特別経費を差し引いた金額(これを「基礎収入」といいます)を算出し、基礎収入を一定の計算式にあてはめる方法が用いられます。そして、特別経費には、夫・妻各自の住居費も含まれています。要するに、婚姻費用を算定する段階で、夫・妻それぞれの住居費は考慮されているのです。

上記の事例でいえば、婚姻費用を算定する段階で妻の住居費は考慮されているのに、夫が住宅ローンを支払うことによって妻が住居費の支払いを免れるという結果が生じるのです。これでは、夫が、婚姻費用の支払いに加えて妻の住居費をも支払っているのと同じ状態であり、不公平が生じます。

このような不公平を是正するため、夫が妻の住居費を事実上負担していることを踏まえ、婚姻費用を減額すべき場合があるのです。

3 婚姻費用はどの程度減額されるのか

住宅ローンの支払いを考慮して婚姻費用が減額される場合があることはおわかりになったかと思います。

それでは、婚姻費用が減額されるとして、その金額はどの程度になるのでしょうか?

「住宅ローン全額が婚姻費用から減額されるのでは?」とお思いになった方もいらっしゃるかもしれませんが、これは間違いです。減額の対象となるのは、「相手方の収入に応じた標準的な住居費」に限られます。

なぜ住宅ローン全額が減額の対象にならないのかというと、住宅ローンには、住居費の支払いという性質と資産形成の性質が含まれるからです。住宅ローン返済は、自己の所有物である不動産について借入金を返済する行為です。住宅ローンを返済すればするほど、負債は減少し、その分だけ資産が増加する関係にあります。このように資産形成の性質がある以上、住宅ローン全額が婚姻費用から減額されてしまう場合、「減額された婚姻費用が支払義務者の資産形成に充てられてしまう」ことになり、婚姻費用を請求する側にとって不公平な結果となるのです。

肝心なのは、「標準的な住居費とはいくらなのか?」という点です。以下、収入別に標準的な住居費を示します。

・年収200万円未満:2万2247円

・年収250万円未満:2万6630円

・年収300万円未満:3万5586円

・年収350万円未満:3万4812円

・年収400万円未満:3万7455円

・年収450万円未満:4万5284円

・年収500万円未満:4万6562円

・年収550万円未満:4万6659円

・年収600万円未満:5万0890円

・年収650万円未満:5万5167円

・年収700万円未満:5万8376円

・年収750万円未満:6万3085円

・年収800万円未満:6万4056円

・年収900万円未満:6万4469円

・年収1000万円未満:6万8332円

・年収1250万円未満:7万8065円

・年収1500万円未満:7万8903円

・年収1500万円以上:9万1554円

4 実際の計算例

ここまでご説明したことを前提に、住宅ローン支払いを理由に婚姻費用を減額する場合の実際の計算例を示します。

仮定の事案として、夫の年収が600万円、妻の年収が300万円、14歳以下の子が1人という家庭を想定します。

上記家庭の場合、夫が妻に対し支払うべき婚姻費用は月額8万7000円程度が目安です。住宅ローンの負担を考慮しない場合、夫は妻に対し月額8万7000円の婚姻費用を支払うことになります。

他方で、夫が、妻と子が住む自宅の住宅ローンを支払い続ける場合はどうなるでしょうか?

前記3で示したとおり、妻の年収300万円に対応する標準的な住居費は3万4812円です。夫は、住宅ローンを支払うことによって妻の住居費を負担しているのですから、本来の婚姻費用8万7000円から3万4812円を差し引き、5万2188円を支払えば足りることになります。

5 おわりに

住宅ローンと婚姻費用の関係についてご理解いただけましたでしょうか?

住宅ローンと婚姻費用の関係は実際に問題となることが多く、基本的な考え方を知っておかないと適切な婚姻費用を取り決めることができません。

当事務所では、住宅ローンと婚姻費用の関係についてのご相談もお受けしておりますので、お悩みの方は是非ご相談ください。

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記事投稿者プロフィール

下大澤 優 弁護士 仙台弁護士会所属 登録番号49627

専門分野:離婚事件、男女関係事件

経歴:静岡県出身。中央大学法学部法律学科、東北大学法科大学院を経て、平成26年1月に弁護士登録。仙台市内の法律事務所での勤務を経て、平成28年1月、仙台市内に定禅寺通り法律事務所を開設し、現在に至る。主に離婚事件・男女問題トラブルの解決に取り組んでいる。

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