婚姻費用について
最終更新日:2022年11月22日
- 1 1 婚姻費用とは
- 2 2 婚姻費用の金額はどのように決まるか
- 2.1 1 婚姻費用・夫婦のみの表
- 2.2 2 婚姻費用・子1人表(0~14歳)
- 2.3 3 婚姻費用・子1人表(15歳以上)
- 2.4 4 婚姻費用・子2人表(第1子及び第2子0~14歳)
- 2.5 5 婚姻費用・子2人表(第1子15歳以上・第2子0~14歳)
- 2.6 6 婚姻費用・子2人表(第1子及び第2子15歳以上)
- 2.7 7 婚姻費用・子3人表(第1子、第2子及び第3子0~14歳)
- 2.8 8 婚姻費用・子3人表(第1子15歳以上、第2子及び第3子0~14歳)
- 2.9 9 婚姻費用・子3人表(第1子及び第2子15歳以上、第3子0~14歳)
- 2.10 10 婚姻費用・子3人表(第1子、第2子及び第3子15歳以上)
- 3 3 婚姻費用算定表があてはまらない場合の算定方法
- 4 4 婚姻費用の支払いはいつから始まるのか(婚姻費用の始期)
- 5 5 婚姻費用はいつまで払ってもらえるのか(婚姻費用の終期)
- 6 6 婚姻費用はどのように取り決めるのか
- 7 7 取り決めた婚姻費用が払われない場合はどうすればよいのか
- 8 婚姻費用の意見書作成サービスについて
- 9 お問い合わせはこちら
- 10 記事投稿者プロフィール
1 婚姻費用とは
婚姻費用とは、各家庭が、その資産・収入・社会的地位等に応じた社会生活を維持するために必要な費用を意味します。わかりやすく言えば、各家庭に応じた社会生活を営むための生活費一般ということです。
婚姻費用の法的根拠は、民法760条です。民法760条には、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」と定められています。
婚姻費用と養育費の違いはわかりにくく、両者を混同してしまう方がいらっしゃいます。
婚姻費用と養育費を区別する第1のポイントは、「離婚成立前か後か」という点です。離婚が成立するまでは婚姻費用、離婚が成立した後は養育費の問題となることを押さえましょう。
婚姻費用と養育費を区別する第2のポイントは、「配偶者の生活費が含まれるか否か」です。婚姻費用には配偶者の生活費が含まれますが、養育費には含まれない(お子さんの生活費に限られる)ことを押さえましょう。通常は、養育費よりも婚姻費用の方が高額になります。
なお、婚姻費用の請求に関しては、以下のような関連問題もあります。
詳細は、リンクをクリックしてご覧ください。
DV行為を理由に婚姻費用請求が権利濫用にあたると認定した裁判例
2 婚姻費用の金額はどのように決まるか
婚姻費用は、夫婦双方の収入、子の人数・年齢といった事情をもとに算定します。
婚姻費用を簡単に算定するためのツールとして、「婚姻費用算定表」が作成され公開されています。
婚姻費用算定表は、子の人数・年齢に応じていくつかのパターンに分かれているため、それぞれの世帯構成に応じた算定表を使用します。
以下に婚姻費用算定表を記載いたしますので、婚姻費用額を算定するためのツールとしてご利用ください。
1 婚姻費用・夫婦のみの表
2 婚姻費用・子1人表(0~14歳)
3 婚姻費用・子1人表(15歳以上)
4 婚姻費用・子2人表(第1子及び第2子0~14歳)
5 婚姻費用・子2人表(第1子15歳以上・第2子0~14歳)
6 婚姻費用・子2人表(第1子及び第2子15歳以上)
7 婚姻費用・子3人表(第1子、第2子及び第3子0~14歳)
8 婚姻費用・子3人表(第1子15歳以上、第2子及び第3子0~14歳)
9 婚姻費用・子3人表(第1子及び第2子15歳以上、第3子0~14歳)
10 婚姻費用・子3人表(第1子、第2子及び第3子15歳以上)
3 婚姻費用算定表があてはまらない場合の算定方法
婚姻費用算定表は、あくまでも簡易に婚姻費用を算定するためのツールです。
そのため、子の人数が多い場合など(算定表で対応できるのは3人まで)、個々の家庭ごとの特殊な問題には対応しきれないことがあります。
このような場合には、算定表を用いるのではなく、婚姻費用を算定するための計算式を利用して適切な婚姻費用を算定しなければなりません。
当事務所では、より適切な婚姻費用を算定するため、算定表ではなく計算式に基づいた算定を行っております。
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4 婚姻費用の支払いはいつから始まるのか(婚姻費用の始期)
原則として、「婚姻費用を請求したとき」が婚姻費用の始期になると理解されています。きちんと婚姻費用を請求しておかないと、過去にさかのぼって婚姻費用の支払いを求めることはできなくなってしまうこともあるため注意が必要です。
次に、何をもって「婚姻費用を請求」したといえるかが問題となります。
最も明確なのは、婚姻費用分担調停を申し立てた時点です。調停を申し立てることによって請求の意思は明確になりますから、調停申立時点が婚姻費用の始期となることに争いはありません。
その他、当事者間で婚姻費用を請求した時点が始期とされることもあります。この場合、内容証明郵便で請求をする、メールやLINEで請求をする、口頭で請求をするなど方法は様々ですが、最低限、請求をしたことが記録として残る方法を利用することが無難です。
最もベストな手段は、別居を開始するとともに婚姻費用分担調停の申し立てをすることです。あるいは、最低限、文書やメールなどにより婚姻費用の請求を行うことが必要です。
5 婚姻費用はいつまで払ってもらえるのか(婚姻費用の終期)
婚姻費用の終期は、離婚が成立した時点です。
離婚が成立した時点で夫婦間の扶養義務は消滅するため、以後は養育費(お子さんの生活費)の支払いが問題となります。
養育費に関しては別ページにてご説明をしておりますので、こちらをご参照ください。
6 婚姻費用はどのように取り決めるのか
・婚姻費用の合意を書面化することの重要性
当事者間で婚姻費用に関する合意ができた場合、その合意を書面化することが重要です。
口頭での合意も有効ではありますが、後に婚姻費用の金額などに争いが生じた場合、合意の内容を立証することが難しくなります。
婚姻費用は離婚が成立するまでの間にわたって支払われるものですから、後にトラブルが生じることを避けるため、書面によって合意をすることが必須といえます。
・どのように合意を書面化すればよいのか
当事者間で婚姻費用の合意をする場合、書面化する方法としては、①当事者間で合意書を作成する、②公正証書を作成する、の2つがあります。
2つの方法のうち、万全を期すならば②公正証書の作成がお勧めです。
公正証書を作成する方法の最大のメリットは、婚姻費用の支払いが滞った場合にただちに強制執行に着手することができる点です。
①当事者間での合意書作成の方法をとった場合、婚姻費用の支払いが滞った際には、裁判を起こして未払婚姻費用を請求し、判決を得てから強制執行に着手しなければなりません。これはかなりの手間となります。
これに対し、②公正証書の作成をした場合は、「強制執行認諾文言」(支払いが滞った際にはただちに強制執行をされることを受け入れる約束)を設けることができ、支払いが滞った際には裁判を経ることなく強制執行に着手することができます。
・婚姻費用分担調停によって解決する場合
当事者間での話し合いではなく、裁判所の調停によって婚姻費用を合意することもあります。
調停によって合意が成立した場合には、家庭裁判所が「調停調書」(合意の内容を記載した文書)を作成します。
調停調書が作成された場合、婚姻費用の支払いが滞れば強制執行に着手することができるため安心です。
7 取り決めた婚姻費用が払われない場合はどうすればよいのか
・婚姻費用不払い問題への対処方法
婚姻費用の不払いが生じたときは、相手方に対して強制執行を行うことを考えなければなりません。
強制執行とは、裁判所に申立てをした上で、相手方の財産(給与、預貯金、不動産、動産など)を強制的に差し押さえる手続です。
強制執行によって婚姻費用の支払いを確保する場合、最も有効なのは「給与の差し押さえ」です。
婚姻費用に関する強制執行の場合、民事執行法151条の2により、支払期限が到来していない婚姻費用(将来の婚姻費用)についても差し押さえをすることができます。この定めにより、相手方の給与を差し押さえた場合、将来にわたり相手方の給与から養育費を強制的に確保することができることになります。
また、給与の差し押さえをする場合、通常の債権であれば給与の手取額の4分の1を超える金額を差し押さえることはできませんが、婚姻費用であれば給与の手取額の2分の1までを差し押さえることができます(民事執行法152条3項)。
以上のとおり、婚姻費用の不払いに関しては、法律上の強力な措置が設けられています。
婚姻費用はお子さんの生活にとって極めて重要なものであり、相手方が支払ってくれないからといって安易にあきらめてしまうべきではありません。
当事務所では、婚姻費用の不払い問題のご相談もお受けしております。婚姻費用の不払いにお悩みの方は、お気軽にご相談ください。ご事情をうかがった上で、できる限りのアドバイスをさせていただきます。
婚姻費用の意見書作成サービスについて
当事務所では、婚姻費用のトラブルを抱えている方向けに、婚姻費用の意見書作成サービスをお受けしております。
ご依頼にあたりかかる費用は手数料5万5000円(税込)のみであり、弁護士に代理人を依頼する場合よりも大幅に低額です。
詳しくは以下のページをご覧ください。
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記事投稿者プロフィール
下大澤 優 弁護士 仙台弁護士会所属 登録番号49627
専門分野:離婚事件、男女関係事件
経歴:静岡県出身。中央大学法学部法律学科、東北大学法科大学院を経て、平成26年1月に弁護士登録。仙台市内の法律事務所での勤務を経て、平成28年1月、仙台市内に定禅寺通り法律事務所を開設し、現在に至ります。主に離婚事件・男女問題トラブルの解決に取り組んでおります。