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不貞慰謝料について

最終更新日:2022年7月23日

1 不貞慰謝料とは何か

不貞慰謝料とは、夫婦の一方が不貞(不倫)をした場合に、不貞をされた側がした側(または不貞相手)に対して請求できる損害賠償です。

不貞慰謝料の法律上の根拠は、民法709条です。民法709条には、不法行為をした者は被害者に対して損害賠償義務を負うと定めれられています。そして、不貞が不法行為にあたることは確立した解釈であり、不貞をした者は、民法709条によって、不貞をされた側が受けた精神的苦痛を賠償する義務を負います。この精神的苦痛に対する賠償こそが慰謝料を意味します。

2 不貞とは何か

ひとくちに「不貞」といっても、男女の関係には、①性的関係を伴わない交際関係、②性行為にまでは至っていないが性的な接触のある交際関係、③性行為を伴う交際関係といった様々な段階があります。実際の事件では、何をもって不貞と評価するのかが争われることがあります。

この点、「不貞」とは、一般的には性行為を意味します。③性行為を伴う交際関係が不貞にあたることは明らかです。

問題になるのは、②性行為にまでは至っていないが性的な接触のある交際関係、③性行為を伴う交際関係といった、性行為は存在しないものの、夫婦関係の維持が困難となり得る場合です。

このような場合には、厳密な意味での「不貞」とまでは言い難くとも、慰謝料請求が認められることもあります。

そもそも不貞が民法709条の不法行為と評価されるのは、不貞が、平穏な夫婦生活という権利・利益を侵害するからです。そうすると、厳密な意味での不貞にあたらなくとも、平穏な夫婦生活を侵害するような行為がされた場合には、それ自体を不法行為と評価することは不可能ではありません。

不貞の定義については、コラムにて詳しく解説しております。よろしければ以下のコラムをご覧ください。

3 不貞を立証するためには

相手方が不貞を素直に認める場合にはさほど問題にはなりませんが、実際の事件では、相手方が不貞を認めない場合が多々あります。この場合には、裁判所に不貞を認めてもらうに足りる証拠を確保することが極めて重要です。

では、不貞を立証するため、どのような証拠が有効でしょうか。

探偵・興信所の調査

不貞を立証するために最も有効なのは、探偵・興信所が作成する調査報告書です。

探偵・興信所が作成する調査報告書には、不貞当事者を尾行することによって判明した様々な情報が記載されます。不貞当事者がラブホテルに出入りする写真等が記載された調査報告書があれば、不貞を立証できる可能性は極めて高くなります。

他方で、探偵・興信所に依頼をするデメリットもあります。探偵・興信所に調査を依頼する場合、投下した人員や調査期間に応じて費用が発生します。この費用は少なくとも数十万円、場合によっては百万円を超えることもあり、かなりの負担となります。

最悪の場合、不貞慰謝料よりも調査費用の方が高額になることも起こり得ますから、どこまで調査費用をかけるかは慎重に考えなければなりません。不貞当事者が不貞を行う日が予測できる場合には、調査期間を絞って調査依頼をするなど、できる限り費用を抑える対策が有効です。
探偵調査費用を不貞慰謝料と併せて請求できるかについては、以下の記事で詳しく解説しております。
よろしければご覧ください。

探偵費用を不貞慰謝料に上乗せして請求できるか

なお、極めて珍しいケースではありますが、ラブホテルへの宿泊が認定されつつ、不貞が否定された裁判例も存在します。この裁判例は以下の記事で詳しく紹介しておりますので、ご覧ください。

メール、LINE、SNSのやり取り

配偶者と不貞相手がやり取りしたメール、LINE、SNSメッセージは、不貞を立証するための有効な証拠となることがあります。

ホテルへの宿泊を約束するメッセージや、性的な内容が含まれるメッセージがやり取りされていた場合、不貞関係にあることが推測されます。

メールを証拠化する際は、メールの送信日時・メールの送信者(送信アドレス)・メールの送信先(送信先アドレス)・メール本文といった情報をすべて読み取れるようにすることが重要です。データを抽出することが難しい場合も多々あるため、メール画面をそのまま写真の撮影してしまうことが最もシンプルで手堅い証拠化方法です。

LINEのやり取りを証拠化する際は、メッセージを一枚一枚写真に撮影するのではなく、テキストデータを抽出してしまうことをオススメします。テキストデータを抽出すると、過去のやり取りを一括して証拠化できます。LINEのやり取りをテキストデータに抽出する具体的方法はこちらをご参照ください。

会話の録音

不貞が判明した後、夫婦間の話し合いの中で相手方が不貞を認めることがあります。

しかし、相手方が一度は不貞を認めたのに、慰謝料請求をした後に不貞を否定することもあります。

この場合、相手方が不貞を認めたか否かは水掛け論となり、事実があやふやになってしまうことにもなりかねません。裁判では、慰謝料を請求する側が不貞の事実を立証する責任を負いますから、事実があやふやなままでは不利益な結果が生じることもあり得ます。

このような事態を防ぐために有効な対策は、話し合いの様子を録音しておくことです。現在では、ICレコーダーのほか、スマートフォン自体のレコーダーアプリを利用することにより、簡単に録音をすることができます。録音することをあらかじめ相手方に伝える必要はありませんから、話し合いの際には是非録音をすることをオススメします。

録音をする場合、不貞の内容についてできるだけ詳細な回答を引き出すことが重要です。

一例ですが、いつから不貞が始まったか、不貞の回数はどのくらいか、不貞相手の氏名・連絡先・職業、不貞相手と知り合ったきっかけは何か、不貞相手は配偶者が既婚者であることを知っていたか、を質問し、相手方に回答させると、後々有益な証拠となるでしょう。

GPSのデータ

裁判では、GPS(位置情報)のデータが不貞の証拠として提出されることがあります。

GPSデータからホテルへの滞在等の情報が読み取れる場合には、不貞を立証するための有効な証拠となります。

ホテルに対する宿泊情報の開示請求

配偶者が利用したホテルを特定できる場合、ホテルに対し、配偶者の宿泊情報の開示を求めることができる場合があります。
この点については、以下の記事にて詳しく解説をしております。

ホテルの宿泊情報を入手して不貞の立証をする方法

4 不貞慰謝料はいくらが妥当か

適切な不貞慰謝料を検討する上で重要なのは、不貞が発覚した後、夫婦関係がどのような状態にあるかです。

具体的には、①不貞が発覚した後も同居をして夫婦関係を継続する場合、②不貞発覚を契機に別居をする場合(離婚をすることまでは決めていない)、③不貞発覚を契機に離婚を決意した場合の大きく3つに分かれます。

上記①〜③の順に、不貞発覚により生じた結果が重くなっていきます。不貞慰謝料は、不貞によって夫婦関係がどのような状態に至ったのかによって金額が大きく変動しますから、夫婦関係が①〜③のどれに当てはまるかをまず考えることが重要です。

不貞が発覚した後も同居をして夫婦関係を継続する場合

この場合、不貞慰謝料の額は低くなる傾向にあります。

明確な基準が存在するわけではないのですが、裁判になった場合、50万円〜100万円程度の慰謝料額にとどまってしまうことが多々あります。

②不貞発覚を契機に別居をする場合(離婚をすることまでは決めていない)

実際に別居をし、夫婦関係が危機に瀕しているわけですから、①よりも重い状態です。

この場合には、裁判で100〜150万円程度の慰謝料が認められる可能性があります。

③不貞発覚を契機に離婚を決意した場合

②よりも重い状態です。

この場合、不貞が原因で夫婦関係が破綻に至ったわけですから、慰謝料額は最も高額になります。

裁判では、200万円〜300万円の慰謝料額がひとつの目安となります。ただし、一般的に認められる慰謝料額は200万円前後であり、300万円の慰謝料が認められるのは比較的レアケースです。

なお、高額過ぎる慰謝料を合意してしまった後に、慰謝料額についてのトラブルが生じることがあります。このような問題については以下のコラム記事にて詳しく解説しておりますので、ご覧ください。

高額な不貞慰謝料の合意の有効性

なお、不貞をした当事者の間で慰謝料の分担が問題となるケースもあります。
この問題についてはコラム記事にて詳しく解説しておりますので、ご覧ください。

いわゆるダブル不倫の場合の慰謝料については、以下の記事で詳しく解説しております。

ダブル不倫事案の慰謝料請求について

5 慰謝料請求の相手方からの反論としてどのようなものがあるか

ここまでは、不貞慰謝料を請求する側の視点で解説をいたしました。

それでは、不貞慰謝料を請求される立場(不貞の当事者)からの反論としては、どのようなものがあり得るでしょうか?

(1) 夫婦関係は既に破綻していたという反論

実務上よく目にする反論です。「婚姻破綻の抗弁」と言ったりもします。

不貞行為によって侵害される権利・利益は「平穏な夫婦生活」ですから、既に夫婦関係が破綻している場合、もはや保護すべき「平穏な夫婦生活」は存在せず、慰謝料請求が認められないことになります。

ただ、このような反論が認められるケースは多くありません。

これは、夫婦関係が破綻していたことを立証するためのハードルが高いからです。

例えば、同居を継続している状況で夫婦関係の破綻を主張したとしても、認められるケースは極めて稀です。同居を継続しているという事実自体が、夫婦関係が破綻していないことを裏付けてしまうからです。

他方で、それなりの期間別居が継続した状態であれば、夫婦関係の破綻を理由に不貞慰謝料請求を阻止できる可能性はあるでしょう。

(2) 既婚者であることを知らなかったという反論

これも実務上よく目にする反論です。

不貞をした相手が既婚者であることを知らず、かつ、知らなかったことについて過失がないとすれば、不貞慰謝料を支払う義務は生じません。この場合、不法行為(民法709条)の要件である「故意・過失」が欠けることになるからです。

この反論をする上では、既婚者であることを知らなかった具体的な理由を詳細に主張することが大事です。

例えば、不貞相手と知り合ったきっかけがマッチングアプリや婚活サイトなどであった場合、既婚者であることを疑うことは難しい場合も多く、反論が通ることがあります。

ほかには、不貞期間の短さ、不貞相手が独身者であると嘘をついていたこと、不貞相手が結婚指輪をしていなかったこと、不貞相手の年齢が若かったことなどの事情も、反論のために有効であることが多いでしょう。

(3) 不貞が発覚したのは離婚後であるとの反論

やや特殊なケースですが、結婚をしていた際は不貞が発覚せず、離婚をした後に不貞が発覚することがります。
この場合、「不貞が発覚しなくても離婚したのだから、慰謝料を支払う義務はない」といった反論がされることが想定されます。

この問題については、コラム記事にて詳しく解説しております。以下のリンクをご覧ください。

6 不貞慰謝料についてのご相談をご希望の方へ

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記事投稿者プロフィール

下大澤 優 弁護士 仙台弁護士会所属 登録番号49627

専門分野:離婚事件、男女関係事件

経歴:静岡県出身。中央大学法学部法律学科、東北大学法科大学院を経て、平成26年1月に弁護士登録。仙台市内の法律事務所での勤務を経て、平成28年1月、仙台市内に定禅寺通り法律事務所を開設し、現在に至る。主に離婚事件・男女問題トラブルの解決に取り組んでいる。

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