最終更新日:2022/05/12
1 はじめに
結婚生活の間、夫婦の一方が自身の実家に生活費を送金するなど、経済的な援助が行われることがあります。
結婚生活が円満な間は、夫婦の一方の実家へ経済的援助をしても、さほどのトラブルになることはありません。
しかし、結婚生活が破綻し、財産分与を考える際、夫婦の一方の実家への経済的援助によって失われた財産の扱いが問題になることがあります。
今回の記事では、結婚生活の中で夫婦の一方の実家になされた経済的援助が財産分与においてどのように考慮されるのかを解説いたします。
2 実家への経済的援助の問題
では、実家への経済的援助は、財産分与においてどのような問題を生じさせるのでしょうか?
これは、端的にいえば、「夫婦共有財産の流出」の問題です。
実家への経済的援助によって、本来であれば夫婦共有財産として積み上げられるべき財産が失われることになります。
そうすると、実家への経済的援助をしていない側からすれば、「一方の実家への経済的援助によって失われた財産は、本来であれば夫婦共有財産として残っていたはずである。失われた財産を夫婦共有財産に戻さなければ不公平ではないか。」という発想に至るわけです。
3 実務上の処理
実家への経済的援助の問題は上記のとおりですが、実務上はどのように処理されるでしょうか。
結論を先に述べますと、夫婦の財産状況を踏まえ、不適切に過大な経済的援助をしない限り、実家への経済的援助を財産分与において考慮することは難しいといえます。
そもそも親子の間には、法的な扶養義務が存在します。
そうすると、夫婦の一方が自身の実家へ行った経済的援助は、扶養義務を実現するための行動であり、ただちに不適切とは言い難いのです。
扶養義務の範囲にとどまる経済的援助がなされる限りでは、これを財産分与において考慮することはできません。
他方で、扶養義務の範囲を逸脱した経済的援助がなされたり、財産分与を逃れるためにあえて実家に財産を移転した場合などには、流出した財産を夫婦共有財産に戻して財産分与を考えることもあり得ます。
この点については、夫婦の収入、貯蓄額、経済的援助の額といった事情を考慮し、ケースバイケースで検討することになるでしょう。
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記事投稿者プロフィール
下大澤 優 弁護士 仙台弁護士会所属 登録番号49627
専門分野:離婚事件、男女関係事件
経歴:静岡県出身。中央大学法学部法律学科、東北大学法科大学院を経て、平成26年1月に弁護士登録。仙台市内の法律事務所での勤務を経て、平成28年1月、仙台市内に定禅寺通り法律事務所を開設し、現在に至ります。主に離婚事件・男女問題トラブルの解決に取り組んでおります。