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相手方に無断で取得したメールが違法証拠であるとされた裁判例(東京地裁平成21年12月16日判決)

最終更新日:2022年1月24日

1 はじめに

「相手方が、私のメールを無断で証拠化し、裁判で不貞の証拠として提出しました。私に無断で取得したメールは、裁判の証拠として採用されてしまうのでしょうか?」

不貞の相談をお受けしていると、このようなご質問を受けることがあります。

一般論としては、「よほど不当な方法で取得された証拠でない限り、裁判の証拠として採用されてしまいます」とお答えするのですが、裁判例の中には、やや特殊な判断をした事案も存在します。

今回ご紹介する東京地裁平成21年12月16日判決は、無断で取得されたメールに関し、比較的緩やかな基準によって証拠からの排除を認めた裁判例です。

2 裁判例の事案の概要

今回ご紹介する事案は、夫である原告(以下「X」とします)が、妻(以下「A」とします)の不貞相手である男性(以下「Y」とします)に対し不貞慰謝料を請求したものです。

裁判では、YとAが不貞行為をしたと認定できるかが争点となりました。

Xは、不貞行為を裏付ける証拠として、YとAとの間で交わされたメールを提出しました。このメールには、YとAの温泉旅行の提案、デートの話題など、親密な関係をうかがわせる内容が含まれていました。

ただ、Xが提出したメールは、Aの同意に基づいて取得したものではありませんでした。

Xは、Aと別居した後、Xの実家で長男との面会交流を行いました。このとき長男は、Aの携帯電話を持参していました(長男は、Aの携帯電話をオモチャ代わりにして遊んでいたようです)。

長男が持参した携帯電話をXが操作したところ、YとAとのメールが存在することが判明し、Xはメールのデータを自身のパソコンにコピーしました。

このような経緯で入手されたメールは、Aに無断で取得された違法な証拠にあたり、裁判の証拠として認められないのではないか、という点が争点になりました。

3 裁判所の判断

裁判所は、結論として、メールは違法に収集されたものであり、証拠として採用すべきでないと判断しました。

 判決文のうち、重要な箇所を引用すると以下のとおりです。

「携帯話機により個人で受信されたメール文は、信書(特定人がその意思を他の特定人に伝達する文書)と同様の実を有するものであり信書と同様に正当な理由なく第三者に開示されるべきものではない。またそうであればこのようなメール文及びそのデータも、正当な理由なく第三者がこれを入手したり、利用したりすることは許されないというべきである。」

「本件メール及びそのデータの入手や利用がAあるいは被告の承諾その他これを正当とする理由に基づくものでないことは明らかであり、その入手や利用は違法であるというべきであり、その入手方法の違法性は刑事上罰すべき行為と実質的に同等に重大なものであるといえる。」

「本件メールは、原告の主張によっても、違法に入手されたデータに基づくものといわざるを得ず、本件訴訟においてはいわゆる違法収集証拠として証拠能力を否定し、証拠から排除するべきである。」

4 裁判例の特殊性

裁判例の一般的な傾向として、違法に収集されたものであるとして証拠を排除する場合、「著しく反社会的な手段によって入手されたもの」といった限定を加えることが多いです。

具体例を挙げると、暴行や脅迫によって入手した証拠など、かなり悪質な方法で入手された証拠でなければ、民事裁判において違法収集証拠と判断されることは考え難いのです。

しかし、今回の裁判例では、メールの取得が「Yの承諾その他これを正当とする理由に基づくものでない」ことを主な理由として、証拠を排除すべきであると判断されています。

これは、裁判例の一般的な傾向よりも緩やかな基準で証拠排除を認定したものであると考えてよいでしょう。

「XとAが別居中であるのに、長男との面会交流の機会を利用してメールを無断取得した」という事情が重要視された可能性はありますが、それにしても、裁判例の一般的傾向からすると証拠排除は認めにくい事案であったと思われます。

5 今回の裁判例を一般化することができるか

今回の裁判例はやはり特殊なケースであり、一般化することは難しいと思われます。

少なくとも、今回の裁判例を根拠に、「無断で取得されたメールなどはすべて証拠排除すべきである」と主張することは難しいでしょう。

実際に私も、今回の裁判例を根拠として、無断で取得されたメールの証拠排除を主張したことがありますが、判決では証拠排除の主張は採用されませんでした。

なかなか扱いが難しい裁判例ではありますが、実務上重要と思われるためご紹介いたしました。

記事投稿者プロフィール

下大澤 優 弁護士 仙台弁護士会所属 登録番号49627

専門分野:離婚事件、男女関係事件

経歴:静岡県出身。中央大学法学部法律学科、東北大学法科大学院を経て、平成26年1月に弁護士登録。仙台市内の法律事務所での勤務を経て、平成28年1月、仙台市内に定禅寺通り法律事務所を開設し、現在に至る。主に離婚事件・男女問題トラブルの解決に取り組んでいる。

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