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子の奨学金は婚姻費用・養育費の減額理由となるか

最終更新日:2022年4月1日

1 はじめに

子どもが大学等に進学する場合、奨学金を借りて学費や生活費に充てることは珍しくありません。
他方で、大学等に通う子どもがいる場合、親権者でない親(あるいは監護者でない親)が、学費等を含めて高額な婚姻費用や養育費を負担することもよくあることです。

ここで一つの疑問が生じます。
それは、「子どもが奨学金を借りているならば、その分だけ婚姻費用や養育費が減額されるべきではないか?」ということです。
大学等に通うための学費や生活費をカバーするために奨学金を借りるわけですから、婚姻費用や養育費は奨学金でカバーできない部分だけを負担すればよいのでは?、という考え方です。

この記事では、子どもが奨学金を借りている場合に婚姻費用や養育費は減額されるのか、という問題について解説をいたします。

2 奨学金を借りていない場合の婚姻費用・養育費

本論に入る前に、「奨学金を借りていない場合の婚姻費用・養育費はどのように算定するのか」を簡単に説明いたします。

この場合、まずはベースとなる婚姻費用・養育費を決めます。
具体的には、父母双方の収入を踏まえ、婚姻費用・養育費算定表を用いるなどして適切な金額を算定します。

ベースとなる婚姻費用・養育費を算定した後は、「標準的な婚姻費用・養育費額ではカバーされない大学学費等の負担割合」を考えます。
これは要するに、「標準的な婚姻費用・養育費に上乗せする学費等の負担額」を決めるということです。
学費等の負担をどのように決めるかに関しては、以下の記事にて詳しく解説しております。

子どもの大学学費などをどのように負担すべきか

 

3 奨学金の考慮のしかた

いよいよ本論に入ります。
子どもが借りる奨学金を婚姻費用・養育費の算定にあたってどのように考慮すべきかについては、参考になる裁判例が存在します。
以下、東京家庭裁判所・平成27年8月13日審判(判例時報2315号96ページ)をご紹介いたします。

3.1 東京家庭裁判所・平成27年8月13日審判の事案

東京家庭裁判所・平成27年8月13日審判の事案は、夫と別居中の妻が、夫に対し、2人の子を含めた婚姻費用を請求したものです。
2人の子は、それぞれ大学と専門学校に通い、相応の学費がかかっていました。そこで妻は、標準の婚姻費用に加え、2人の子の学費の負担を夫に求めたのです。
ただ、2人の子は、貸与型の奨学金を借りていました。奨学金の額は毎月12万円であり、学費の大部分をカバーすることができる金額でした。

以上の事案のもと、婚姻費用を請求された夫は、子が借りる奨学金は婚姻費用分担額を減額する事情になると争ったのです。

3.2 裁判所の判断

上記事案につき、裁判所は次のとおり判断しました。

「貸与とはいえ、これらの奨学金により長男及び長女の教育にかかる学費等が賄われていることは事実であり、しかも、これらの奨学金で賄われる部分については、基本的には、長男及び長女が、将来、奨学金の返済という形で負担するものであって、当事者双方が婚姻費用として分担するものではない・・・のであるから、奨学金の貸与の事実が、相手方の婚姻費用の分担義務を軽減させるべき事情にならないということはできない。」

結論として、裁判所は、「奨学金によって学費の大部分がカバーされる以上、標準的な婚姻費用を超えて学費等の負担を認めることはできない」と判断したわけです。

3.3 裁判例を踏まえた実務的な処理

上記裁判例を踏まえますと、子どもが奨学金を借りている事案の場合、奨学金が学費等の支払いに充てられることを前提として、適切な婚姻費用・養育費を算定することが実務的な処理となります。

したがって、子どもが奨学金を借りているという事情は、婚姻費用・養育費を減額する理由になると考えることができます。

3.4 注意点

上記裁判例が、「奨学金で賄われる部分については、基本的には、長男及び長女が、将来、奨学金の返済という形で負担するものであって、当事者双方が婚姻費用として分担するものではない」と述べている部分には注意が必要です。

これを裏返すと、教育ローンなど、子どもではなく親が返済義務を負う借入に関しては、父母が公平に分担をすべきであり、婚姻費用・養育費の減額は許されない可能性が高いといえるでしょう。

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記事投稿者プロフィール

下大澤 優 弁護士 仙台弁護士会所属 登録番号49627

専門分野:離婚事件、男女関係事件

経歴:静岡県出身。中央大学法学部法律学科、東北大学法科大学院を経て、平成26年1月に弁護士登録。仙台市内の法律事務所での勤務を経て、平成28年1月、仙台市内に定禅寺通り法律事務所を開設し、現在に至る。主に離婚事件・男女問題トラブルの解決に取り組んでいる。

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