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婚姻費用の始期についての裁判例(最高裁判所第2小法廷・平成24年12月5日決定)

1 問題の所在

「婚姻費用の支払義務が発生するのはいつからか?(婚姻費用の始期)」が問題となることがあります。

この点については、本ホームページ・婚姻費用について(クリックすると該当ページが開きます)でご説明したとおり、「婚姻費用の請求をした時点から支払義務が発生する」ことが原則です。

ただ、事案によっては、「婚姻費用の請求をした時点から支払義務が発生する」という原則を維持することが適切ではないこともあります。

今回ご紹介する裁判例は、「婚姻費用の請求をした時点から支払義務が発生する」との原則とは異なる判断を採用したものです。

2 事案の概要

本事案は、妻が夫に対し、婚姻費用の請求をしたものです。

妻は、平成23年8月下旬に子どもとともに自宅を出て、夫との別居を開始しました。

その後、妻は、平成23年10月に、夫に対し婚姻費用の分担を求めて調停を申し立てました。しかし、妻と夫との合意が整わず、調停は不成立となり、審判手続に移行して判断がされることになりました。

審判手続に移行した後、第1審・第2審ともに、夫に対し、別居開始後の平成23年9月からの婚姻費用支払いを命じました。

以上の判断に対し、夫が最高裁判所への不服申立(許可抗告)を行いました。

3 何が争点か

事案の概要を一読しただけでは分かりづらいと思いますが、本事案の争点は、「夫が婚姻費用を分担するのは、別居開始時(平成23年9月)からなのか、調停申立時(平成23年10月)からなのか」です。

妻は平成23年8月下旬から別居を開始していますから、少なくとも平成23年9月からは婚姻費用を必要とする状態にあります。

他方で、妻が調停を申立てたのは平成23年10月ですから、「明確に婚姻費用を請求した時点を支払い開始日とする」場合、夫は平成23年10月以降の婚姻費用を支払えばよいことになります。

「婚姻費用の請求をした時点から支払義務が発生する」という原則を維持した場合、夫は平成23年10月以降の婚姻費用を支払えばよい、との結論に至ります。

では、本事案で最終的にはどのような判断がされたのでしょうか?

4 判決の結論

本事案では、夫は平成23年9月以降の婚姻費用を支払う必要があるとの判断が示されました。

この結論に至る理由として、①別居開始時点での妻の収入が月額10万円に満たなかったことからすれば、夫は、妻が要扶養状態にあったことを当然に認識すべきであったこと、及び、②別居時から請求時までの期間がわずか1ヶ月余りであることからすれば、夫に平成23年9月からの婚姻費用を負担させたとしても酷とはいえないこと、の2点が挙げられています。

つまり、①・②の理由により、婚姻費用の始期に関する原則を修正したということです。

5 コメント

裁判所が挙げた①・②の理由は説得的であり、結論自体に異論はないでしょう。

ただ、本事案の判断をどこまで適用できるかを考えたとき、判断に悩むケースがあると思います。

本事案では、別居開始時と婚姻費用請求時とのタイムラグが1ヶ月でしたが、このタイムラグが2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月・・・と増えた場合に、同じような判断がされるとは限りません。

結局は、個別の事案に応じて、①請求者が扶養を要する状態にあるか、②過去に遡って婚姻費用を負担させることが義務者にとって酷ではないか、を検討していくしかないのでしょう。

間違いなくいえることは、本事案のような争いを未然に防ぐため、別居開始とともに婚姻費用を請求しておくことがベストであるということです。

記事投稿者プロフィール

下大澤 優 弁護士 仙台弁護士会所属 登録番号49627

専門分野:離婚事件、男女関係事件

経歴:静岡県出身。中央大学法学部法律学科、東北大学法科大学院を経て、平成26年1月に弁護士登録。仙台市内の法律事務所での勤務を経て、平成28年1月、仙台市内に定禅寺通り法律事務所を開設し、現在に至る。主に離婚事件・男女問題トラブルの解決に取り組んでいる。

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