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婚姻費用に加えて別居中の家賃を求めることができるか

最終更新日:2022年4月9日

1 はじめに

夫婦が別居を始めると、収入の高い側は低い側に対し婚姻費用(別居中の生活費)の分担を求めることができます。
そして、適切な婚姻費用の額は、夫婦双方の収入などに応じて決まります。

適切に算定された婚姻費用額の中には、「標準的な住居費相当額」が含まれています。
つまり、「婚姻費用の中には別居中の家賃も含まれているため、婚姻費用とは別途家賃を上乗せすることはできない」というのが原則的な扱いです。

しかし、婚姻費用額に含まれる標準的な住居費相当額は、実際の家賃に比べて低額であるため、「月々の婚姻費用のみでは家賃をカバーすることができない」ことはよく起こります。
このとき、「実際にかかる家賃を、婚姻費用に上乗せして請求することはできないか」という問題が生じます。

この記事では、月々の婚姻費用に加えて、別居中の家賃の分担を求めることができるケースがあり得るのかを解説いたします。

なお、婚姻費用についての一般的な解説は以下のページをご覧ください。

婚姻費用について

2 家賃の分担を求めることは原則としてできない

既に触れたところではありますが、「婚姻費用に加えて家賃の分担を求めることはできない」というのが原則的な結論です。

なぜこの結論になるかというと、「適切な婚姻費用額を算定するプロセスの中で、夫婦双方の収入に応じた標準的な住居費が考慮されている」からです。
もちろん、婚姻費用額に含まれる標準的な住居費と、実際にかかる家賃とが一致しないことは起こりえます(というより、一致しないことが大半です)。
しかし、この不一致をその都度修正するとなると、婚姻費用額を算定するプロセスが複雑になります。
簡易迅速に適切な婚姻費用額を算定することを優先すると、現実の家賃額を考慮することは難しいのです。

3 家賃の上乗せ分担が認められた例外的なケース

原則的な結論は上記のとおりですが、例外的に、家庭裁判所が家賃の上乗せ分担を命じたケースがあります。
これは、東京家庭裁判所・平成31年1月11日審判(家庭の法と裁判30号99ページ)の事案です。

東京家庭裁判所・平成31年1月11日審判の事案は、別居中の夫婦のうち、妻が夫に対し婚姻費用分担請求をしたものです。
夫婦が別居をした理由は夫の不貞行為です。不貞をしたのは夫なのですが、この事案では、夫が妻に対し、自宅から出るよう繰り返し求めました
そこで妻は、小学生の子2人とともに、近隣の賃貸住宅(家賃は月10万0625円)に転居しました。

上記事実関係のもと、家庭裁判所は、以下のように判断しました。

申立人が現在の賃貸住宅を借りたのは、主として、平成29年7月に相手方の不貞関係が発覚し、その後、代理人弁護士を通じて相手方に不貞関係の解消や不貞相手を会社から退職させるよう求めていたが、事態が進展せず、そのうち、相手方が、同居宅を出た上、申立人に対し、同居宅から出るよう繰り返し求めたためであると認められるのであり、基本的には、相手方の一連の行為によってやむを得ずに転居したものであると認められる。近隣の住居を借りたのも、夫婦の問題には関係のない、子らの生活環境の変化を最小限にしようとするものであって合理性があり、その広さや賃料額も、従前の生活や親子3人の一般的な生活水準に比して不相当に広く、高額であるということもできないのであり、これらを考慮すると、本件においては、相手方には、申立人の住居費につき、標準算定方式で考慮されている額を超える部分につき収入比で按分して分担すべき義務があると定めるのが公平にかなうというべきである。

上記事案では、結論として、月々の婚姻費用額の中に含まれる住居費相当額2万7940円と実際の家賃との差額7万2685円のうち、夫婦の収入比率に応じ、6万7839円を夫に分担させることになりました。
つまり、夫に対し、「標準的な婚姻費用+6万7839円(家賃分)」の分担が命じられたのです。

4 おわりに

東京家庭裁判所・平成31年1月11日審判の判断は、実務的にはかなり特殊です。
「自ら不貞をしておきながら、妻に対し自宅を出るよう繰り返し求めた」という夫の有責性が強く考慮された上での判断です。
この判断を一般化して、「婚姻費用に加えて家賃の分担をも求めることができる」と考えることは避けた方がよいでしょう。

しかし、東京家庭裁判所・平成31年1月11日審判は、家賃の上乗せ分担が認められた実例として参考になります。
相手方の有責性が強い事案では、上記審判例を参考にして婚姻費用の修正を主張することは検討できると思われます。

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記事投稿者プロフィール

下大澤 優 弁護士 仙台弁護士会所属 登録番号49627

専門分野:離婚事件、男女関係事件

経歴:静岡県出身。中央大学法学部法律学科、東北大学法科大学院を経て、平成26年1月に弁護士登録。仙台市内の法律事務所での勤務を経て、平成28年1月、仙台市内に定禅寺通り法律事務所を開設し、現在に至る。主に離婚事件・男女問題トラブルの解決に取り組んでいる。

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