最終更新日:2022年3月26日
1. 適切な財産分与を請求するためには
相手方に対して財産分与を請求する場合、事前に準備をすることが大事です。
適切な財産分与を請求するためには、まず、相手方がどのような財産を持っているかを把握しなければなりません。
また、相手方が持っている財産にどのくらいの価値があるのかという情報も、ある程度は把握しなければなりません。
「相手方がどんな財産を持っているかわからないし、その価値もよくわからない」という状況ですと、見通しがつかないまま財産分与の請求を行わざるを得ないため、不安を抱えたまま手続を進めることになってしまいます。
別居をしてしまうと、相手方が持っている財産に関する資料を揃えることは難しくなってしまいます。別居をする前に、相手方が持っている財産についてできる限りの資料を集めておくことが、適切な財産分与の実現につながります。
2. 準備しておきたい資料(財産の種類別)
2.1 銀行預金
・預貯金通帳
銀行預金は、財産分与を考える際に必ず問題となります。
相手方名義の銀行預金がどのくらい存在するのかを把握することは、財産分与を考える際に極めて大事です。
銀行預金に関する情報を把握するときに最も便利なのは預貯金通帳です。可能であれば、過去1~2年分の預貯金通帳のコピー(スマホで写真を撮る方法でも構いません)を取得してください。
なお、どうしても相手方の預貯金通帳を確認することができない場合、弁護士による調査(弁護士法23条の2に基づく照会)ができる場合もあります。最低限、「相手方がどの銀行に口座を持っているか」だけは把握しておきましょう。
2.2 不動産
不動産は隠すことが難しい財産ですから、「相手方名義の不動産があるかどうかわからない」という事態は起こりにくいでしょう。登記事項証明書(誰でも取得できます)を取得すれば不動産の権利関係はすぐにわかります。
ただ、不動産の財産分与を考える場合は、「資産価値はいくらか?」、「住宅ローンはいくら残っているか?」という点が問題となります。
これらの点を検討するため、次の資料を確保できるとよいでしょう。
・不動産仲介業者の査定書
「簡易査定」と呼ばれるものです。
不動産仲介業者に依頼をすると、無料で不動産の市場価値を算定してもらえます。
不動産の資産価値を把握するにあたって参考になります。
・住宅ローン契約書
不動産を購入する際、銀行と締結した住宅ローン借り入れの契約書です。
購入当時の借入額や、連帯債務・連帯保証の有無などを確認することができます。
・住宅ローン返済予定表
住宅ローンが存在する場合、毎年定期的に、銀行から住宅ローンの返済予定が郵送されます。
住宅ローン返済予定表をみれば、現在どのくらいのローンが残っているかを簡単に把握することができます。
2.3 保険
・保険証券
夫婦名義の生命保険、お子さんの学資保険がある場合、財産分与の問題が生じます。
保険に解約返戻金がある場合、解約返戻金額が「財産」という扱いになるわけです。
誰の名義でどのような保険が存在するのかについては、保険証券を確認すれば把握できます。
別居をする前に、相手方名義の保険証券のコピーを取っておくとよいです。
2.4 退職金
・相手方の勤務先の退職金規程
退職金があるかどうか、あるとしてどのくらいの金額になるかに関しては、勤務先が定める条件によります。
正確な退職金額を把握するためには、勤務先の退職金規程を確認しなければなりません。
ただ、相手方の協力なく退職金規程を確認することは難しいものです。 相手方の協力が得られない場合は、弁護士による調査(弁護士法23条の2に基づく照会)、裁判所の調査嘱託(ただし、調停や裁判が係属する場合でないと利用できません)によって退職金額を把握することもできます。
2.5 個人年金
・資産残高報告書
相手方が個人年金を契約している場合、現在の資産残高について財産分与を行うことができます。
資産残高については、定期的に報告書が送付されます。
自宅に保管されている報告書のコピーを取っておくとよいでしょう。
2.6 株式
・取引残高報告書など
相手方が株式を持っている場合、株式の内容や資産価値といった情報を把握する必要があります。
株式に関しては、最低でも年に1度、証券会社から「取引残高報告書」が郵送されます。
同居中であれば、自宅に届いた取引残高報告書のコピーを取っておくとよいでしょう。
2.7 自動車
・車検証やローン契約書
自動車の財産分与が問題となる場合、自動車に関する情報や、ローンの有無を把握する必要があります。
自動車に関する情報については、車検証のコピーを取っておくとよいです。
また、自動車ローンが残っている場合は、ローン契約書のコピーを取っておくとよいです。
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記事投稿者プロフィール
下大澤 優 弁護士 仙台弁護士会所属 登録番号49627
専門分野:離婚事件、男女関係事件
経歴:静岡県出身。中央大学法学部法律学科、東北大学法科大学院を経て、平成26年1月に弁護士登録。仙台市内の法律事務所での勤務を経て、平成28年1月、仙台市内に定禅寺通り法律事務所を開設し、現在に至ります。主に離婚事件・男女問題トラブルの解決に取り組んでおります。