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別居開始時期はどのように判断されるか

最終更新日:2022年5月21日

1 はじめに

 夫婦として同居をし、ある時期を境に別居を開始した事案であれば、別居の開始時期は明確です。
 しかし、実際には、「いつから別居を開始したといえるのか」の判断が難しい事案も存在します。

 例えば、夫婦の一方が単身赴任をしている場合、基本的には別居生活を営むことになりますが、これを別居期間に含めてよいのか疑問が生じます。
 また、夫婦仲が険悪になり、夫婦の一方が「毎週土日しか自宅に帰らない」ような状態になっている場合、これを別居と評価してよいのか疑問が生じます。

 この記事では、参考となる裁判例をご紹介しつつ、別居を開始したと評価するための判断基準などを解説いたします。

2 大阪高等裁判所・平成4年5月26日判決

 参考裁判例としてご紹介するのは、大阪高等裁判所・平成4年5月26日判決(凡例タイムズ797号253ページ)です。
 この裁判例では、「いつの時点をもって別居開始時期とするか」が正面から争いとなりました。

(1) 事案の概要

 まずはじめに、大阪高等裁判所・平成4年5月26日判決の事実関係を簡単に説明いたします。

 この事案は、夫(以下「X」)から妻(以下「Y」)に対し離婚を求めて訴訟を提起したものです。
 Xは、Yとの婚姻期間中に女性と不貞関係をもち、不貞相手女性との間に子が生まれ、認知もしていました(Xは有責配偶者ということです)。
 その後、XとYは離れて暮らし、不貞相手女性と子との共同生活を開始しました。しかし、Xは、不貞相手女性と暮らすようになってからも、月に1~2回、Yの自宅に立ち寄り、宿泊する行動を続けました。
 最終的に、XとYとの間で離婚調停が開始され、XはYの自宅に立ち寄ることを一切やめました。

 上記事実関係のもと、Xは、「不貞相手女性と共同生活を開始した時点が別居開始時期である」と主張し、長期間の別居が継続したことを理由に離婚を求めたのです。

(2) 第1審裁判所の判断

 大阪高等裁判所の判断を説明する前に、X・Yの訴訟の第1審の判断を紹介いたします。

 第1審の判決では、XとYの別居開始時期を、「X・Yの離婚調停が始まり、XがYの自宅に立ち寄ることをやめた時点」と認定しました。
 このため、XとYの別居期間は長期に及んでいるとは評価されず、Xの離婚請求は認められませんでした。

(3) 高等裁判所の判断

 大阪高等裁判所は、別居の開始時期に関し、第1審の判断とは異なる判断をしました。
 結論をいうと、「Xが不貞相手女性と共同生活を開始した時点」を別居開始時期と認定したのです。
 これにより、X・Yの別居期間は長期に及ぶと判断され、Xの離婚請求が認められました。
 大阪高等裁判所の判断内容につき、重要な部分を抽出すると次のとおりです。

「(XがYの自宅に立ち寄ったことは)Yに対する愛情や同人との婚姻生活継続の意思によるものではないのであって、このことは、Xが離婚の意思をYに対して明らかにし、大阪家庭裁判所に離婚を求める調停申立てを行った後も調停期日出頭その他の用事で大阪に来たときは従前同様に松崎町の建物に立ち寄り、宿泊していたことからも明らかである。一方、Yにおいても、Xが松崎町の建物を訪れた際に受動的に身の回りの世話をするのみにとどまり、Xに対して夫婦としての共同生活の回復を働きかけた形跡は全く窮われないことからすると、YもXと夫婦として同居する生活を復活させることを断念し、婚姻共同生活を継続する意欲を失っていたものと推察される。 以上によれば、XとYとの婚姻関係は、昭和四〇年以降夫婦としての共同生活の実体を欠き、その回復の見込みが全くない状態に至っていて、破綻状態にあるものと認められ、婚姻を継続し難い重大な事由が存するものというべきである。」

(4) 筆者のコメント

 大阪高等裁判所の判断の中で最も注目すべきは、「婚姻共同生活継続の意思」、「婚姻共同生活を継続する意欲」という事情です。
 外形的な事情から別居開始時期を判断することが難しい場合、「婚姻共同生活継続の意思」といった主観的な事情が、別居開始時期の判断にあたり重要になるということです。
 単身赴任による別居生活の場合を例にとれば、外形的な生活状況に変化はないとしても、夫婦が「婚姻共同生活継続の意思」を失った時点で「別居開始」と評価される可能性があることになるでしょう。

 ただし、「婚姻共同生活継続の意思」をどのように認定するかについては難しい問題があるように思います。
 単に「結婚生活を続けることが難しいと思っていた」というだけでは「婚姻共同継続の意思の喪失」を認定することは難しいと思われます。
 結局は、「婚姻共同生活継続の意思の喪失」を推測させるような外形的な事情が必要になるでしょう。
 夫婦の一方が他方に対し、離婚の申し入れを行った事実を立証(メールや文書のやり取り等を証拠とすることが考えられます)することができれば、「婚姻共同生活継続の意思の喪失」が認定される可能性は高くなるでしょう。

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記事投稿者プロフィール

下大澤 優 弁護士 仙台弁護士会所属 登録番号49627

専門分野:離婚事件、男女関係事件

経歴:静岡県出身。中央大学法学部法律学科、東北大学法科大学院を経て、平成26年1月に弁護士登録。仙台市内の法律事務所での勤務を経て、平成28年1月、仙台市内に定禅寺通り法律事務所を開設し、現在に至る。主に離婚事件・男女問題トラブルの解決に取り組んでいる。

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