年金分割について
記事更新日:2023年2月12日
1 年金分割とは何か
年金分割とは、老齢厚生年金(共済年金も含みます)について、妻(または夫)が夫(または妻)の標準報酬額(それまでの保険料納付実績)の分割を受けることにより、妻(または夫)が、分割を受けた標準報酬額に応じた年金等を受け取ることができる制度です。
少しややこしいのですが、年金分割といっても、「夫(または妻)が受け取る年金の半分を受け取ることができる」ものではありません。
年金分割とは、婚姻期間に対応する標準報酬額(保険料納付実績)を分割し、その限度で将来の年金を受け取ることができる制度です。
なお、年金分割は、配偶者が厚生年金や共済年金に加入していることを前提とした制度です。配偶者が自営業者である場合、厚生年金や共済年金に加入しているものではないため、年金分割の対象とはなりません。
2 前提として必要となる知識
「1号被保険者」とは
自営業者を意味するとご理解ください。
「2号被保険者」とは
厚生年金保険の被保険者(サラリーマンや公務員など)を意味します。
「3号被保険者」とは
主として2号被保険者の収入によって生計を維持する者を意味します。
サラリーマンや公務員の配偶者をもつ専業主婦(または専業主夫)をイメージしていただけると理解しやすいです。
3 年金分割の種類
年金分割には、「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。
以下、各種類について解説いたします。
合意分割
夫婦の間で標準報酬額の按分割合を取り決め、合意に基づいて年金分割を行う制度です。
この制度は平成19年4月1日に施行され、同日以降に離婚をする場合に適用されます。なお、この制度が適用される場合、平成19年4月1日以前の婚姻期間も含めて年金分割を行うことができます。
夫婦間で合意をした場合は、公証役場で公正証書を作成するか、夫婦間で作成した合意書に公証人の認証を受ける必要があります。
夫婦間で合意が整わない場合は、家庭裁判所に調停または審判を申し立て、年金分割を求める必要があります。
3号分割
合意分割とは異なり、標準報酬額を当然に2分の1の割合で分割する制度です。
夫婦の一方が被用者年金に加入し、もう一方が被扶養配偶者として国民年金法上の第3号被保険者と認定されていた期間(ただし、平成20年4月1日以降の期間に限られます)が対象となります。
この制度は、平成20年4月1日以降、離婚するまでの間に第3号被保険者でなければ用いることができません。共働きなどによって他の配偶者も厚生年金保険の被保険者となっている場合には、3号分割ではなく合意分割を用いる必要があります。
4 年金分割をするために必要な書類
(1) 年金分割のための情報通知書
年金分割をするにあたっては、まず「年金分割のための情報通知書」を取得しなければなりません。
「年金分割のための情報通知書」は、最寄りの年金事務所で取得することができます。
「年金分割のための情報通知書」には、これまで夫婦が納付した厚生年金保険料の納付記録(対象期間標準報酬総額)や、按分割合の範囲が記載されます。
ご参考までに、「年金分割のための情報通知書」の書式は次のとおりです。
5 年金分割手続の流れ
年金分割手続の流れは、次のフローチャートのとおりです。
手続の分かれ目は、「夫婦間の話し合いによって合意できるか否か」です。
話し合いによって合意できない場合には、家庭裁判所の手続(調停・審判)によって年金分割を実現することになります。
6 年金分割の期限
年金分割は、原則として離婚成立から2年以内に行わなければならず、期限を過ぎると請求ができなくなります(厚生年金保険法78条の2第1項ただし書き)。
期限を過ぎてしまうことのないようご注意ください。
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記事投稿者プロフィール
下大澤 優 弁護士 仙台弁護士会所属 登録番号49627
専門分野:離婚事件、男女関係事件
経歴:静岡県出身。中央大学法学部法律学科、東北大学法科大学院を経て、平成26年1月に弁護士登録。仙台市内の法律事務所での勤務を経て、平成28年1月、仙台市内に定禅寺通り法律事務所を開設し、現在に至ります。主に離婚事件・男女問題トラブルの解決に取り組んでおります。