婚約破棄について
最終更新日:2022年1月25日
1 婚約とは何か
「婚約」とは、将来婚姻(結婚)をすることについての合意を意味します。
将来の婚姻を予約するということです。
婚約は、「婚姻予約」の略語です。
2 婚約はどのように成立するのか
(1) 婚約の成立に書面は必要か
婚約は、書面がなくとも有効に成立します。
当事者の間で、将来婚姻をすることについての真摯な合意があれば、口頭で婚約をしようとも有効です。
(2) 婚約の成立を裏付ける事情は何か
婚約は口頭での合意によって成立するとしても、単に「結婚しようと約束した」と主張するだけでは、婚約の成立は簡単には認められません。
当事者が真摯に婚姻の合意をする場合、通常は、相応のプロセスを経ます。
例えば、①プロポーズ、②双方の親族への報告、③婚約指輪の購入、④結婚式の準備、⑤新居の契約などのプロセスを経た場合には、当事者は真摯に婚姻の合意をしたと認められる可能性は高いでしょう。
婚約の成立を主張する場合は、併せて上記の事情をきちんと主張することが大事です。
3 婚約の不当破棄とは何か
婚約が成立した後、何らかの事情によって合意が破棄されることがあります。これが「婚約破棄」です。
婚約は法的に保護される合意ですから、正当な理由がないのに婚約を破棄した場合、破棄した側はペナルティを受けます。正当な理由がないのに婚約を破棄することは、「婚約の不当破棄」といいます。
それでは、正当な婚約破棄と不当な婚約破棄とを区別する境界線はどこにあるのでしょうか?
この点については事案ごとの判断をせざるを得ませんが、一般的にいえば、「将来の婚姻生活を維持することを断念せざるを得ない事情」があれば、婚約破棄の正当性が認められます。以下、婚約破棄の正当性が認められる場合・認められない場合の一例を挙げます。
(1) 婚約破棄の正当性が認められる場合
・婚約の相手が浮気をした場合
・婚約の相手が多額の借金を隠していた場合
・婚約の相手が収入を偽っていた場合
・婚約の相手が重い精神的症状を患った場合
(2) 婚約破棄の正当性が認められない場合
・単なる価値観の不一致
・婚約相手の親と性格が合わない
・他に好きな人ができた
4 不当に婚約を破棄した場合の損害賠償
婚約を不当に破棄した側は、相手方に対して損害賠償義務を負います。
婚約破棄によって生じる損害には、①慰謝料(精神的苦痛に対する賠償)、②逸失利益(婚約を契機に仕事を辞めた場合)、③新居への転居費用、④結婚式のキャンセル料など、様々なものがあります。
このうち、最も問題になることが多いのが慰謝料です。
適切な慰謝料額は事案によって様々です。50万円を下回るケースもあれば、100万円を超えるケースもあります。
慰謝料額を考える上で重要な事情を挙げると以下のとおりです。以下の事情を考慮して、不当に婚約を破棄された側が受ける精神的苦痛の度合いを検討します。
・それまでの交際期間
・当事者の年齢
・妊娠の有無
・婚約破棄の原因(婚約破棄をした側の悪質性)
・婚約破棄をした後の対応(婚約破棄をした側の対応の誠実さ)
5 婚約者の浮気相手に対する慰謝料請求
婚約の不当破棄の問題は、基本的には婚約をした当事者の間で解決されるべき問題です。
しかし、婚約者の浮気によって婚約破棄を余儀なくされた場合には、浮気相手に対する慰謝料請求などができる場合もあります。
浮気相手に対し慰謝料などをするためには、浮気相手が、婚約の事実を知っていたか、少なくとも知ることができた、という事情が必要です。
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記事投稿者プロフィール
下大澤 優 弁護士 仙台弁護士会所属 登録番号49627
専門分野:離婚事件、男女関係事件
経歴:静岡県出身。中央大学法学部法律学科、東北大学法科大学院を経て、平成26年1月に弁護士登録。仙台市内の法律事務所での勤務を経て、平成28年1月、仙台市内に定禅寺通り法律事務所を開設し、現在に至ります。主に離婚事件・男女問題トラブルの解決に取り組んでおります。